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夏の☆ダームエル独身フラグまとめ
貴族の星結びの儀式の後の宴(お相手探しパーティ)にあたって毎年「今年こそは」と気合いを入れていたというダームエルですが(web574話など)
調べてみたら毎年毎年『まともに相手探しなどできなさそう』な理由が見当たりましたので、
「気合を入れていた年、毎年と言えるほどありましたっけ……?」と思いつつまとめてみました。
1年目/15歳/トロンベ事件の前
フレーベルタークの令嬢と婚約中のため、星結びの宴で相手探しはしていないはず
2年目/16歳/なりたてわけあり護衛騎士
領主一族の側近に大抜擢されたものの、罰で降格中なので相手探しは最初からあきらめ気味、全く目立たず埋没していた
3年目/17歳/成績上げ隊の報酬の後
「一年、時間を下さい」
4年目/18歳/(ユレーヴェ中)
「私は、ローゼマイン様の護衛騎士です」
5年目/19歳/(ユレーヴェ中)
ブリギッテの星結びが行われ、主はいつ目覚めるか不明、メンタルも立場も不安定だったと考えられる
6年目/20歳/(ランプレヒト結婚直前)
冬に主が目覚めるも、春にはアーレンから花嫁が来ることになり、またも揺れる情勢
また、ダームエルはエルヴィーラに紹介を頼んでいたため、ある程度はフリーでいる必要があったとも考えられる
(夏の宴の後、エルヴィーラから「今は情勢もまずい」との回答を得て、紹介待ち状態はいったん終わった模様)
7年目/21歳/フェ婚約決定後
情勢が落ち着くのを待っていたと思われるダームエルをよそに、メチャクチャ荒れる情勢
(フェ様の縁談、それを口実に来訪するゲオ様の対策などで忙しく、それどころではなかった模様……あの主人公がダームエルレポートをしなかった夏)
……毎年毎年、気合いが活かせる状況じゃないですよね!? という……
(特に7年目ひどすぎでは)
そして、
8年目/22歳/ロゼマ中央行き内定後
「私はもう結婚は無理です」→「私はエーレンフェストに残ります」(574話)
……ダームエルが『全力で相手探しのできる宴』は、最後まで来なかったようです。
気合い……。(涙)
補足:
574話(8年目)、フィリーネにふられたと思い落ち込んでいたダームエルは、ローゼマインに向かって弱音を吐き、望みがあると聞いて少し元気になり、フィリーネを待つと決めてから宴に向かいました。
独身のまま待つと決めたわけですから、宴で相手探しはしないはずです。
(ここ……ダームエルは告白待ちのヘタレのように見えてしまうかも知れませんが、『フィリーネの都合にいつでも合わせられるようフリーのままでいる』と宣言したわけで、とんでもない誠実さと言えるかと。自分は縁談探しをやめるけれどフィリーネには選択の余地をまるごと残している、もしもフィリーネが恋ではなく王族の側近として中級貴族などを選んだなら自分は独身のままになる覚悟……並大抵のものではありませんよ)
それと、9年目の夏も解釈によっては『本編の時間内』に入りますが、ここでフィリーネが別の誰かと婚約してダームエルがフリーに戻っている可能性はかなり低く、宴で張り切ることはまずないかと思われます。
(2017年の本編完結直後の作者先生の雑談からは『ダームエルとフィリーネの婚約』が読み取れますし、2023年末の書籍最終巻の加筆によって『本編の時間軸の最後の春の時点で結婚の約束をしていた』ことがより明確になりましたから、ダームエルが相手探しにはげむ宴は永久に来ません。……たぶん。)
星結びの時期が近づいてきても嘆くことはなくなった(と思われる)ダームエル。良かったですね。
余談(私見):ゲオ様はエーレンが『ジル領主で安定』するのを妨害していました。そのため、結果としてダームエルの縁談の阻害にもなっていたのだなとあらためて。(ダームエルはエーレンフェストの情勢が落ち着かないと結婚相手を探しにくいので。)間接的な敵がゲオ様って分が悪すぎでは!?
2020/08/20 改稿(記載をより細かくしただけで内容に変わりはありません)、私見を追加
2020/08/07 大幅改稿・改題 原題『夏のダームエルまとめ』
2025/04/24 本編最終巻を受けて追記
2026/10/30 文面微調整
#ダームエル #本好きのまとめ等 #本好きの下剋上
貴族の星結びの儀式の後の宴(お相手探しパーティ)にあたって毎年「今年こそは」と気合いを入れていたというダームエルですが(web574話など)
調べてみたら毎年毎年『まともに相手探しなどできなさそう』な理由が見当たりましたので、
「気合を入れていた年、毎年と言えるほどありましたっけ……?」と思いつつまとめてみました。
1年目/15歳/トロンベ事件の前
フレーベルタークの令嬢と婚約中のため、星結びの宴で相手探しはしていないはず
2年目/16歳/なりたてわけあり護衛騎士
領主一族の側近に大抜擢されたものの、罰で降格中なので相手探しは最初からあきらめ気味、全く目立たず埋没していた
3年目/17歳/成績上げ隊の報酬の後
「一年、時間を下さい」
4年目/18歳/(ユレーヴェ中)
「私は、ローゼマイン様の護衛騎士です」
5年目/19歳/(ユレーヴェ中)
ブリギッテの星結びが行われ、主はいつ目覚めるか不明、メンタルも立場も不安定だったと考えられる
6年目/20歳/(ランプレヒト結婚直前)
冬に主が目覚めるも、春にはアーレンから花嫁が来ることになり、またも揺れる情勢
また、ダームエルはエルヴィーラに紹介を頼んでいたため、ある程度はフリーでいる必要があったとも考えられる
(夏の宴の後、エルヴィーラから「今は情勢もまずい」との回答を得て、紹介待ち状態はいったん終わった模様)
7年目/21歳/フェ婚約決定後
情勢が落ち着くのを待っていたと思われるダームエルをよそに、メチャクチャ荒れる情勢
(フェ様の縁談、それを口実に来訪するゲオ様の対策などで忙しく、それどころではなかった模様……あの主人公がダームエルレポートをしなかった夏)
……毎年毎年、気合いが活かせる状況じゃないですよね!? という……
(特に7年目ひどすぎでは)
そして、
8年目/22歳/ロゼマ中央行き内定後
「私はもう結婚は無理です」→「私はエーレンフェストに残ります」(574話)
……ダームエルが『全力で相手探しのできる宴』は、最後まで来なかったようです。
気合い……。(涙)
補足:
574話(8年目)、フィリーネにふられたと思い落ち込んでいたダームエルは、ローゼマインに向かって弱音を吐き、望みがあると聞いて少し元気になり、フィリーネを待つと決めてから宴に向かいました。
独身のまま待つと決めたわけですから、宴で相手探しはしないはずです。
(ここ……ダームエルは告白待ちのヘタレのように見えてしまうかも知れませんが、『フィリーネの都合にいつでも合わせられるようフリーのままでいる』と宣言したわけで、とんでもない誠実さと言えるかと。自分は縁談探しをやめるけれどフィリーネには選択の余地をまるごと残している、もしもフィリーネが恋ではなく王族の側近として中級貴族などを選んだなら自分は独身のままになる覚悟……並大抵のものではありませんよ)
それと、9年目の夏も解釈によっては『本編の時間内』に入りますが、ここでフィリーネが別の誰かと婚約してダームエルがフリーに戻っている可能性はかなり低く、宴で張り切ることはまずないかと思われます。
(2017年の本編完結直後の作者先生の雑談からは『ダームエルとフィリーネの婚約』が読み取れますし、2023年末の書籍最終巻の加筆によって『本編の時間軸の最後の春の時点で結婚の約束をしていた』ことがより明確になりましたから、ダームエルが相手探しにはげむ宴は永久に来ません。……たぶん。)
星結びの時期が近づいてきても嘆くことはなくなった(と思われる)ダームエル。良かったですね。
余談(私見):ゲオ様はエーレンが『ジル領主で安定』するのを妨害していました。そのため、結果としてダームエルの縁談の阻害にもなっていたのだなとあらためて。(ダームエルはエーレンフェストの情勢が落ち着かないと結婚相手を探しにくいので。)間接的な敵がゲオ様って分が悪すぎでは!?
2020/08/20 改稿(記載をより細かくしただけで内容に変わりはありません)、私見を追加
2020/08/07 大幅改稿・改題 原題『夏のダームエルまとめ』
2025/04/24 本編最終巻を受けて追記
2026/10/30 文面微調整
#ダームエル #本好きのまとめ等 #本好きの下剋上
2019年2月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
既聴オルドナンツをスルーなんてしないアウブ・エーレンフェストの短い話
ユレーヴェ終盤ごろ。エーレンフェストの街の結界についてなど、独自の解釈があります。
そのオルドナンツはいつも、夕食を終えたころにやってくる。
「フェルディナンドです。今夜は一度神殿に戻ります。結界に近づいたころあらためて連絡します」
了承の返事を飛ばし、私はため息をついた。
「ハァ……またか」
フェルディナンドは収穫祭のため直轄地を回っている最中である。
さほど遠くない村ばかり担当しているし、フェルディナンドが単騎で駆ける騎獣の速さと言えば凡庸な貴族とは比べ物にならないが、それでも今すぐに戻ってくるものではない。
おそらく鐘半分くらいはかかり、到着の連絡が来るまでに七の鐘は過ぎてしまうだろう。普通ならば街の結界への出入りの許可などとても出せない時間である。
しかし、弟が神殿に戻ってくる理由はたった一つ。ローゼマインの状態を見るためだ。そしてそれは私にとっても小さいことではない。ローゼマインは養女にしてまで保護を決めた娘であり、私の実の娘の命を救い身代わりのように毒に倒れてしまった恩人でもある。
眠りの長さに周囲も心を痛める中、ようやく少しばかりの変化が見られたならば、気にかけるのは当然だ。夜半にたびたび戻ってくるのも労うべきことだと思う。
だが、それでも。
……今宵はフロレンツィアが了承の合図を出してくれていたというのに。
寝台にあがったあとにオルドナンツが届くことを考えると、落ち着いて妻の部屋に足を運ぶこともできない。
オルドナンツを排除する方法はないわけではないが、もし連絡が取れないとなったら弟はよけいに心を揺らすことになるだろう。苦労をかけている自覚はあるが、私とてそれをやたらに増やしたいと考えているわけではないのだ。
……早く起きてくれ、ローゼマイン。私のためにも。
フロレンツィアの部屋がある方向を未練がましく見つめながら、私は仕方なく読みかけの書類に手を伸ばした。
[本好きの下剋上ファン作品 No.7]
#ジルヴェスター #フェルディナンド #本好きの下剋上 #本好きファン小説
ユレーヴェ終盤ごろ。エーレンフェストの街の結界についてなど、独自の解釈があります。
そのオルドナンツはいつも、夕食を終えたころにやってくる。
「フェルディナンドです。今夜は一度神殿に戻ります。結界に近づいたころあらためて連絡します」
了承の返事を飛ばし、私はため息をついた。
「ハァ……またか」
フェルディナンドは収穫祭のため直轄地を回っている最中である。
さほど遠くない村ばかり担当しているし、フェルディナンドが単騎で駆ける騎獣の速さと言えば凡庸な貴族とは比べ物にならないが、それでも今すぐに戻ってくるものではない。
おそらく鐘半分くらいはかかり、到着の連絡が来るまでに七の鐘は過ぎてしまうだろう。普通ならば街の結界への出入りの許可などとても出せない時間である。
しかし、弟が神殿に戻ってくる理由はたった一つ。ローゼマインの状態を見るためだ。そしてそれは私にとっても小さいことではない。ローゼマインは養女にしてまで保護を決めた娘であり、私の実の娘の命を救い身代わりのように毒に倒れてしまった恩人でもある。
眠りの長さに周囲も心を痛める中、ようやく少しばかりの変化が見られたならば、気にかけるのは当然だ。夜半にたびたび戻ってくるのも労うべきことだと思う。
だが、それでも。
……今宵はフロレンツィアが了承の合図を出してくれていたというのに。
寝台にあがったあとにオルドナンツが届くことを考えると、落ち着いて妻の部屋に足を運ぶこともできない。
オルドナンツを排除する方法はないわけではないが、もし連絡が取れないとなったら弟はよけいに心を揺らすことになるだろう。苦労をかけている自覚はあるが、私とてそれをやたらに増やしたいと考えているわけではないのだ。
……早く起きてくれ、ローゼマイン。私のためにも。
フロレンツィアの部屋がある方向を未練がましく見つめながら、私は仕方なく読みかけの書類に手を伸ばした。
[本好きの下剋上ファン作品 No.7]
#ジルヴェスター #フェルディナンド #本好きの下剋上 #本好きファン小説
2019年1月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
ダームエルおとぎばなし 金の令嬢 銀の令嬢
その1
「あなたが守っていたのはこの領主の養女ですか? それともこの上級貴族の令嬢ですか?」
「いいえ、私が守っていたのは平民の青色巫女見習いです」
「正直のご褒美に、女神の化身の無茶振りに一生振り回される未来を差し上げましょう」
「!?」
その2
「あなたが求婚したのはギーベの妹の中級貴族ですか? それともフレーベルタークの下級貴族ですか?」
「側近同士の年下の下級貴族を含め、全員です」
「そうですか。前の二人の可能性を戻せるのなら差し上げて下さいと、三人目の娘は去りましたが……」
「どちらに向かいましたか!!」
#ダームエル #ダムフィリ #本好きの下剋上 #本好き小ネタ #なかみゑ自薦
その1
「あなたが守っていたのはこの領主の養女ですか? それともこの上級貴族の令嬢ですか?」
「いいえ、私が守っていたのは平民の青色巫女見習いです」
「正直のご褒美に、女神の化身の無茶振りに一生振り回される未来を差し上げましょう」
「!?」
その2
「あなたが求婚したのはギーベの妹の中級貴族ですか? それともフレーベルタークの下級貴族ですか?」
「側近同士の年下の下級貴族を含め、全員です」
「そうですか。前の二人の可能性を戻せるのなら差し上げて下さいと、三人目の娘は去りましたが……」
「どちらに向かいましたか!!」
#ダームエル #ダムフィリ #本好きの下剋上 #本好き小ネタ #なかみゑ自薦
2018年12月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
2018年11月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
ふぁんぶ3カウントダウンなど本好き絵まとめ
『本好きの下剋上 ふぁんぶっく3』発売まであと2日!
2018/11/09 01:17:32
『本好きの下剋上 ふぁんぶっく3』発売まであと1日
2018/11/09 01:17:59
祝! 『本好きの下剋上 ふぁんぶっく3』発売日!
2018/11/10 09:56:01
おまけ:ほわんほわんほわんフィリーネ

2018/11/10 10:41:45
#ダムフィリ
当時はまだ先生がカウントダウンに個別コメントをしてくださることがありました(ありがたき幸せ……のおすそ分けとしてリンクを貼っておきます)
https://x.com/miyakazuki01/status/106106...
ふぁんぶ3の香月先生書き下ろし部分はフィリーネの献上品(概念)!
『本好きの下剋上 ふぁんぶっく3』発売まであと2日!
2018/11/09 01:17:32
『本好きの下剋上 ふぁんぶっく3』発売まであと1日
2018/11/09 01:17:59
祝! 『本好きの下剋上 ふぁんぶっく3』発売日!
2018/11/10 09:56:01
おまけ:ほわんほわんほわんフィリーネ

2018/11/10 10:41:45
#ダムフィリ
当時はまだ先生がカウントダウンに個別コメントをしてくださることがありました(ありがたき幸せ……のおすそ分けとしてリンクを貼っておきます)
https://x.com/miyakazuki01/status/106106...
ふぁんぶ3の香月先生書き下ろし部分はフィリーネの献上品(概念)!
2018年10月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
シャットダウン
原作本編終了後の時間軸。フェルマイ。2018年10月19日のキス祭り(?)に乗らせていただきました。
「……口付けをしても?」
「え?」
自分が想われている時の顔、というのは気付いてしまうとばつが悪い。フェルディナンドは隠し部屋でわたしと目が合うと、大切そうに、愛おしそうに、優しく……それなのにどこか辛そうに、目を細めて微笑むのだ。わたしからは同じ気持ちを返せない罪悪感が募ってしまう。
そんな顔でこんな事を言われたらなおさらだ。というか、わたしが処理落ちした。
……口付け? フェルディナンド様が? 口付けってあの? 食べ物の話じゃないよね? フェルディナンド様が? 誰と? フェルディナンド様が? ……わたし?
わたしが固まってどのくらい過ぎただろう。フェルディナンドの笑みが面白がるように崩れた。
「……と、尋ねてからしたそうだ。ダームエルは」
「ダームエルは」
ポカンとしたまま復唱すると、フェルディナンドは楽しそうに肩を揺らした。
「そうですか、ダームエルが。……って!」
……からかいましたね!?
情緒のかけらもない婚約者を持って苦悩する家族の気持ちを案じる、真摯な乙女に対してなんてことを。ちょうど読み終わっていた本を閉じて、ふんぬぅ、と怒りをこめて睨み上げるが、全く効果はない。
……そもそも、そんな細かいところまで聞き出してたの?
婚約者のフィリーネを隠し部屋に連れ込んでいたことがバレて貴重な面会時間がほとんど事情聴取になってしまったダームエルの、塩をかけたなめくじのような顔色を思い出す。いや、実際になめくじに塩をかけてみたことはないから、どんな様子になるのか知らないけれど。
あの時はわたしもフィリーネを問い詰めて、魔力を流された感想からダームエルに贈られた求愛の魔術具の数まで根掘り葉掘り聞いた。仕方がなかったのだ。真っ赤になって涙ぐむフィリーネがいくら可哀想でも知る義務がある。わたしはフィリーネの主なのだから。あくまで主の務めを果たしただけで、いい取材になっただとかお母様に横流しして次の本のネタにしてもらおうだなんてかけらも思っていない。
……万が一にも、億が一にも、フィリーネの体調が十ヶ月ほど激変するようなことがあったなら、放っておけるはずがないし。
でもフェルディナンドは違う。昔からダームエルを便利に使ってきたし、これからも使う立場になるだろうけれど、直接の主ではない。恋物語に興味もないのだから、ファーストキス前のシチュエーションなどという面白……ゴホン、個人的なことまで聞き出すのに、理由らしい理由はないはずだ。
「フェルディナンド様、ダームエルをどれだけ苛めたのですか?」
「苛めてなどおらぬ。ただ、ローゼマインに信頼されエーレンフェストの各業務とフィリーネを任された護衛騎士が、いかにして成人も星結びも待たず婚約者に接触するに至ったかを詳らかにさせただけだ」
「完全に脅しじゃないですか!」
フェルディナンドにそんなことを言われたら、ダームエルはサンドバッグより無抵抗になるだろう。せめてわたしが代わりに憤慨してあげると、フェルディナンドはフンと鼻を鳴らして手にしていた魔術具をテーブルに置いた。作業がひと段落ついたのだろう、道具類を軽く片付けて、長椅子のわたしの隣に腰掛ける。ひょい、とわたしの手から本を取り上げて、それもテーブルに置いた。
……近い!
フェルディナンドがぐっと顔を近づけてきて、わたしは思わず息を呑んだ。いつも近すぎる近すぎると眉をつりあげるコルネリウスにそんなことはないと返して来たわたしでも思う。これは近い。ぎゅーほどはくっついていないはずなのに、全く違う距離感に頭がくらりとする。
「このように、長椅子に並んで腰掛けて迫ったそうだ」
肩に手を回して引き寄せられて、反対の手できゅっと手を握られる。これがダームエルの白状したことの再現なら、ダームエルはずいぶんと頑張ったものだ。
……今のわたしにダームエルを褒めていられる余裕なんてないけれど!
フェルディナンドの体温はこんなに高かっただろうか。力のこめられた腕が、密着している半身が熱い。
「あ、あの……」
「口付けを、しても?」
さっきと同じセリフを口にしたフェルディナンドの表情は真剣なものに変わっていて、わたしはまたも言葉を失った。
……これも再現? ……それとも。
心臓が高鳴り、魔力の蓋がぶわっと開く。全身が湯沸かし器になったようでいたたまれない。フェルディナンドはますます近づいてくる。どうしよう。どうしたらいいの。怖くなるほど戸惑っているのに、何かに縫いとめられたように動けない。
「……マイン」
名を呼ばれ、薄い金の瞳の奥にフェルディナンドの望みを見た瞬間、わたしのまぶたは勝手に落ちた。
お読みいただきありがとうございます。
こういうタイミング? みたいなものに乗れることがあまりないもので、書き上げられて嬉しいような、気恥ずかしいような、色々と動揺していますが、少しでも楽しんでいただけたなら何よりです。
(いいねやRTなどにはとても喜ぶほうです、よろしければお願いします……!)
しかし本当、大変なものが投下されましたね……! 先生こわい! フェルマイこわい!(※まんじゅう怖い)
感情を自覚する前のフェルディナンド様も良いのですけれど、いけしゃあしゃあとしているフェルディナンド様もとても好きです。
2025/05/23追記:
『ハン五』53話(2025/5/14更新)により時系列が原作世界と矛盾すると言いますか……ローゼマインの情緒が原作に比べて不足しているかも知れないという事態になりましたが、ご容赦ください。
(※自覚後のロゼマ様がフェ様と二人きりになった時の様子はまだ出ていませんので、完全に矛盾したとも言い切れません)
『キス祭り』については、某SNSの検索らんにコレ↓を入れてぽちっとすればわかるかと。
from:miyakazuki01 since:2018-10-19_23:55:00_JST until:2018-10-20_00:10:00_JST include:nativeretweets
2025/10/22追記:
作品説明文に付記してあった
(※ダームエルがフィリーネと婚約しています)
の一文を抜きました。
原作書籍最終巻の加筆により、婚約同然の認識が広まりましたので。
(2017年の時点でダムフィリは婚約発表されていたも同然なのですが、2024年になってやっと、やっと、認識が広まってくれたのですよ……。
……実を言うと、未だに『婚約』や『結婚相手』などとハッキリ書かれたことはないんですけれどね(笑)
周囲のキャラの態度からなんとなく推測はできても、『アレキサンドリア移動予定者として共に行動する』という記載から「将来の約束を交わした後だ」と断言するには『ダームエルの立場では結婚相手がいなければローゼマインを追って移動できない』というユルゲンシュミット知識と理解が必要です。)
[本好きの下剋上 ファン作品 No.5]
#フェルマイ#ダムフィリ #本好きファン小説
原作本編終了後の時間軸。フェルマイ。2018年10月19日のキス祭り(?)に乗らせていただきました。
「……口付けをしても?」
「え?」
自分が想われている時の顔、というのは気付いてしまうとばつが悪い。フェルディナンドは隠し部屋でわたしと目が合うと、大切そうに、愛おしそうに、優しく……それなのにどこか辛そうに、目を細めて微笑むのだ。わたしからは同じ気持ちを返せない罪悪感が募ってしまう。
そんな顔でこんな事を言われたらなおさらだ。というか、わたしが処理落ちした。
……口付け? フェルディナンド様が? 口付けってあの? 食べ物の話じゃないよね? フェルディナンド様が? 誰と? フェルディナンド様が? ……わたし?
わたしが固まってどのくらい過ぎただろう。フェルディナンドの笑みが面白がるように崩れた。
「……と、尋ねてからしたそうだ。ダームエルは」
「ダームエルは」
ポカンとしたまま復唱すると、フェルディナンドは楽しそうに肩を揺らした。
「そうですか、ダームエルが。……って!」
……からかいましたね!?
情緒のかけらもない婚約者を持って苦悩する家族の気持ちを案じる、真摯な乙女に対してなんてことを。ちょうど読み終わっていた本を閉じて、ふんぬぅ、と怒りをこめて睨み上げるが、全く効果はない。
……そもそも、そんな細かいところまで聞き出してたの?
婚約者のフィリーネを隠し部屋に連れ込んでいたことがバレて貴重な面会時間がほとんど事情聴取になってしまったダームエルの、塩をかけたなめくじのような顔色を思い出す。いや、実際になめくじに塩をかけてみたことはないから、どんな様子になるのか知らないけれど。
あの時はわたしもフィリーネを問い詰めて、魔力を流された感想からダームエルに贈られた求愛の魔術具の数まで根掘り葉掘り聞いた。仕方がなかったのだ。真っ赤になって涙ぐむフィリーネがいくら可哀想でも知る義務がある。わたしはフィリーネの主なのだから。あくまで主の務めを果たしただけで、いい取材になっただとかお母様に横流しして次の本のネタにしてもらおうだなんてかけらも思っていない。
……万が一にも、億が一にも、フィリーネの体調が十ヶ月ほど激変するようなことがあったなら、放っておけるはずがないし。
でもフェルディナンドは違う。昔からダームエルを便利に使ってきたし、これからも使う立場になるだろうけれど、直接の主ではない。恋物語に興味もないのだから、ファーストキス前のシチュエーションなどという面白……ゴホン、個人的なことまで聞き出すのに、理由らしい理由はないはずだ。
「フェルディナンド様、ダームエルをどれだけ苛めたのですか?」
「苛めてなどおらぬ。ただ、ローゼマインに信頼されエーレンフェストの各業務とフィリーネを任された護衛騎士が、いかにして成人も星結びも待たず婚約者に接触するに至ったかを詳らかにさせただけだ」
「完全に脅しじゃないですか!」
フェルディナンドにそんなことを言われたら、ダームエルはサンドバッグより無抵抗になるだろう。せめてわたしが代わりに憤慨してあげると、フェルディナンドはフンと鼻を鳴らして手にしていた魔術具をテーブルに置いた。作業がひと段落ついたのだろう、道具類を軽く片付けて、長椅子のわたしの隣に腰掛ける。ひょい、とわたしの手から本を取り上げて、それもテーブルに置いた。
……近い!
フェルディナンドがぐっと顔を近づけてきて、わたしは思わず息を呑んだ。いつも近すぎる近すぎると眉をつりあげるコルネリウスにそんなことはないと返して来たわたしでも思う。これは近い。ぎゅーほどはくっついていないはずなのに、全く違う距離感に頭がくらりとする。
「このように、長椅子に並んで腰掛けて迫ったそうだ」
肩に手を回して引き寄せられて、反対の手できゅっと手を握られる。これがダームエルの白状したことの再現なら、ダームエルはずいぶんと頑張ったものだ。
……今のわたしにダームエルを褒めていられる余裕なんてないけれど!
フェルディナンドの体温はこんなに高かっただろうか。力のこめられた腕が、密着している半身が熱い。
「あ、あの……」
「口付けを、しても?」
さっきと同じセリフを口にしたフェルディナンドの表情は真剣なものに変わっていて、わたしはまたも言葉を失った。
……これも再現? ……それとも。
心臓が高鳴り、魔力の蓋がぶわっと開く。全身が湯沸かし器になったようでいたたまれない。フェルディナンドはますます近づいてくる。どうしよう。どうしたらいいの。怖くなるほど戸惑っているのに、何かに縫いとめられたように動けない。
「……マイン」
名を呼ばれ、薄い金の瞳の奥にフェルディナンドの望みを見た瞬間、わたしのまぶたは勝手に落ちた。
お読みいただきありがとうございます。
こういうタイミング? みたいなものに乗れることがあまりないもので、書き上げられて嬉しいような、気恥ずかしいような、色々と動揺していますが、少しでも楽しんでいただけたなら何よりです。
(いいねやRTなどにはとても喜ぶほうです、よろしければお願いします……!)
しかし本当、大変なものが投下されましたね……! 先生こわい! フェルマイこわい!(※まんじゅう怖い)
感情を自覚する前のフェルディナンド様も良いのですけれど、いけしゃあしゃあとしているフェルディナンド様もとても好きです。
2025/05/23追記:
『ハン五』53話(2025/5/14更新)により時系列が原作世界と矛盾すると言いますか……ローゼマインの情緒が原作に比べて不足しているかも知れないという事態になりましたが、ご容赦ください。
(※自覚後のロゼマ様がフェ様と二人きりになった時の様子はまだ出ていませんので、完全に矛盾したとも言い切れません)
『キス祭り』については、某SNSの検索らんにコレ↓を入れてぽちっとすればわかるかと。
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2025/10/22追記:
作品説明文に付記してあった
(※ダームエルがフィリーネと婚約しています)
の一文を抜きました。
原作書籍最終巻の加筆により、婚約同然の認識が広まりましたので。
(2017年の時点でダムフィリは婚約発表されていたも同然なのですが、2024年になってやっと、やっと、認識が広まってくれたのですよ……。
……実を言うと、未だに『婚約』や『結婚相手』などとハッキリ書かれたことはないんですけれどね(笑)
周囲のキャラの態度からなんとなく推測はできても、『アレキサンドリア移動予定者として共に行動する』という記載から「将来の約束を交わした後だ」と断言するには『ダームエルの立場では結婚相手がいなければローゼマインを追って移動できない』というユルゲンシュミット知識と理解が必要です。)
[本好きの下剋上 ファン作品 No.5]
#フェルマイ#ダムフィリ #本好きファン小説
シュラートラウムの祝福と共に
原作本編終了より数年後。結婚済ダムフィリ(やや甘め?)……と、ダムフィリなのにお名前が出てくるハンネローレ様という武力。
アレキサンドリアの海にたまに出るという強大な魔獣の討伐を終え、ダームエルが帰って来ました。連絡があった通り大変に疲れてはいるものの怪我はなく、きちんと食欲もあるそうです。安堵の息をついて、一緒に夕食をとります。
ダームエルはこちらに来てから好物になったお魚のクリームがけに目を細めながら、皆の活躍を語ってくれました。わたくしもよく存じているアウブの護衛騎士達からまだ馴染みの薄い方まで、たくさんの名前が出て来ます。それぞれの武勇が目に浮かぶようで、ただ戦況を案じていた胸に、踊るような気持ちや知識としての興味が混ざって行きます。
……ダームエルのお話はまとまっているので取材がしやすくて助かる、とローデリヒが言っていましたが、その通りですね。
そんなお話を、誰よりもたくさん聞くことのできる立場になれた喜びも込み上げてきます。
「今日はゆっくりとお休みくださいね」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
全身鎧のまま帰宅したため先にお風呂を済ませていたダームエルに就寝の挨拶をして、わたくしは自室に戻りました。
雑事を少々こなし、お風呂に入ります。いつもより温まったような気分でお風呂を終えると、部屋ではダームエルがお茶を飲んでいました。
「……お疲れではないのですか?」
わたくしが幾度か瞬きながらそう言うと、ダームエルは困ったような、気まずいような、それでいて少し甘えるような、微妙な表情でわたくしを見ました。
「ただ共寝するだけになるだろうが……邪魔だろうか?」
「いいえ、いらしてください」
こういう時、ダームエルはちょっぴり可愛らしくなるのです。お断りなどするはずがありません。
相好を崩しながら、わたくしも軽くお茶をいただいて、寝台に上がりました。
すぐ隣にいてくれることが嬉しくて、嬉しくて、ついダームエルの肩に頭をすり寄せると、ダームエルもわたくしに身を寄せてくれます。そのままやんわりと温もりを確かめ合っていると、ふと、ダームエルが口を開きました。
「……フィリーネはなぜ、私を、その……想うようになってくれたんだい?」
わたくしはしばし考え込みました。そう問われると、すぐには言葉が出ません。
幼い憧れだったころから、他にない感覚を共有するようになった今まで、わたくしはずっとダームエルに惹かれたまま生きています。誠実なところも、一生懸命なところも、温かい笑顔も、優しい手のひらも、力強い腕も、熱い胸も、みんな大好きなのです。
「……わたくし、ダームエルの素敵なところを山ほど知っておりますから、言葉にするのは難しいのですけれど……
ダームエルが素敵だと気が付くようになったのはきっと、ダームエルがどなたにでも優しいからです。
ダームエルは、自分が嬉しい時でも悲しい時でも他の方に優しく……他の方のありようを認めることができるでしょう?
ですからわたくしは、そんなダームエルにもっと認められて、隣を歩いて行けるようになりたいと思ったのです。
そして、ダームエルが疲れてしまったときには、休みを取れる場所のような者でありたい……」
「……今、聞くべきではなかったな」
ダームエルは頬を赤らめて、観念した、とばかりにわたくしを抱きしめました。
ほんのりと魔力が伝わってきて、全身を熱が駆け巡ろうとします。わたくしは、ゆだねてしまいたい衝動に抗い、ぐっと拳を握りました。
「体を休めることも騎士の務めでしょう?
今は……『ダメですよ』」
ハンネローレ様の物真似をすると、ダームエルは腕の力をゆるめました。ローゼマイン様からこっそりと側近だけの間に広まったこの物真似は、茶目っ気と温かみがあり、本物への賞賛を含んでいますが、意味合いはかなりきつい制止です。
ダームエルはひどく情けない顔を作って見せてから、フフッと笑いました。わたくしも一緒になってクスクスと肩を揺らします。
……夢の神 シュラートラウムよ、今夜もわたくし達をお守りください。
やがて訪れた祝福は、願いどおりとても安らかなものでした。
- 了 -
お読みいただきありがとうございます。
感想、いいね、リアクション等は大変励みになります。少しでも好き要素がありましたらお寄せいただけますと幸いです。
以下、裏話。
拙作No.3『祈り方も知らなかったころ』でダームエルが帰宅した後のお話です。
ダームエルがアレキサンドリアの大規模魔獣討伐に初参戦するころ、すでに邸宅を持っているかどうか迷いましたが、わたしが楽しいので家持ちにしてしまいました。
大きな魚介類とのバトルは楽しげだと思ったのですが、海中の相手と戦うのはとても大変そうで、アーレンスバッハ時代など一体どうやって……という気持ちになってきましたので、どんな主だったのかの描写はぺいっと投げました。
フェルディナンド様がいらっしゃれば、海中くらいなんてことない気もするのですけれど……。
(2025/05/23追記:その後、海での戦いの方法についての情報は出ました。)
ダームエルの好物をクリームがけにするかマヨ焼きにするかも悩みどころでした。結局は原作に出てきた別の食べ物に寄せてクリームを採用しましたが、マヨ焼きも好きだと思います。
2025/05/23 更新:
ストーリーに影響のないレベルの軽微な改稿と追記。
[本好きの下剋上ファン作品 No.4]
#ダムフィリ #フィリーネ #ダームエル #本好きファン小説
原作本編終了より数年後。結婚済ダムフィリ(やや甘め?)……と、ダムフィリなのにお名前が出てくるハンネローレ様という武力。
アレキサンドリアの海にたまに出るという強大な魔獣の討伐を終え、ダームエルが帰って来ました。連絡があった通り大変に疲れてはいるものの怪我はなく、きちんと食欲もあるそうです。安堵の息をついて、一緒に夕食をとります。
ダームエルはこちらに来てから好物になったお魚のクリームがけに目を細めながら、皆の活躍を語ってくれました。わたくしもよく存じているアウブの護衛騎士達からまだ馴染みの薄い方まで、たくさんの名前が出て来ます。それぞれの武勇が目に浮かぶようで、ただ戦況を案じていた胸に、踊るような気持ちや知識としての興味が混ざって行きます。
……ダームエルのお話はまとまっているので取材がしやすくて助かる、とローデリヒが言っていましたが、その通りですね。
そんなお話を、誰よりもたくさん聞くことのできる立場になれた喜びも込み上げてきます。
「今日はゆっくりとお休みくださいね」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
全身鎧のまま帰宅したため先にお風呂を済ませていたダームエルに就寝の挨拶をして、わたくしは自室に戻りました。
雑事を少々こなし、お風呂に入ります。いつもより温まったような気分でお風呂を終えると、部屋ではダームエルがお茶を飲んでいました。
「……お疲れではないのですか?」
わたくしが幾度か瞬きながらそう言うと、ダームエルは困ったような、気まずいような、それでいて少し甘えるような、微妙な表情でわたくしを見ました。
「ただ共寝するだけになるだろうが……邪魔だろうか?」
「いいえ、いらしてください」
こういう時、ダームエルはちょっぴり可愛らしくなるのです。お断りなどするはずがありません。
相好を崩しながら、わたくしも軽くお茶をいただいて、寝台に上がりました。
すぐ隣にいてくれることが嬉しくて、嬉しくて、ついダームエルの肩に頭をすり寄せると、ダームエルもわたくしに身を寄せてくれます。そのままやんわりと温もりを確かめ合っていると、ふと、ダームエルが口を開きました。
「……フィリーネはなぜ、私を、その……想うようになってくれたんだい?」
わたくしはしばし考え込みました。そう問われると、すぐには言葉が出ません。
幼い憧れだったころから、他にない感覚を共有するようになった今まで、わたくしはずっとダームエルに惹かれたまま生きています。誠実なところも、一生懸命なところも、温かい笑顔も、優しい手のひらも、力強い腕も、熱い胸も、みんな大好きなのです。
「……わたくし、ダームエルの素敵なところを山ほど知っておりますから、言葉にするのは難しいのですけれど……
ダームエルが素敵だと気が付くようになったのはきっと、ダームエルがどなたにでも優しいからです。
ダームエルは、自分が嬉しい時でも悲しい時でも他の方に優しく……他の方のありようを認めることができるでしょう?
ですからわたくしは、そんなダームエルにもっと認められて、隣を歩いて行けるようになりたいと思ったのです。
そして、ダームエルが疲れてしまったときには、休みを取れる場所のような者でありたい……」
「……今、聞くべきではなかったな」
ダームエルは頬を赤らめて、観念した、とばかりにわたくしを抱きしめました。
ほんのりと魔力が伝わってきて、全身を熱が駆け巡ろうとします。わたくしは、ゆだねてしまいたい衝動に抗い、ぐっと拳を握りました。
「体を休めることも騎士の務めでしょう?
今は……『ダメですよ』」
ハンネローレ様の物真似をすると、ダームエルは腕の力をゆるめました。ローゼマイン様からこっそりと側近だけの間に広まったこの物真似は、茶目っ気と温かみがあり、本物への賞賛を含んでいますが、意味合いはかなりきつい制止です。
ダームエルはひどく情けない顔を作って見せてから、フフッと笑いました。わたくしも一緒になってクスクスと肩を揺らします。
……夢の神 シュラートラウムよ、今夜もわたくし達をお守りください。
やがて訪れた祝福は、願いどおりとても安らかなものでした。
- 了 -
お読みいただきありがとうございます。
感想、いいね、リアクション等は大変励みになります。少しでも好き要素がありましたらお寄せいただけますと幸いです。
以下、裏話。
拙作No.3『祈り方も知らなかったころ』でダームエルが帰宅した後のお話です。
ダームエルがアレキサンドリアの大規模魔獣討伐に初参戦するころ、すでに邸宅を持っているかどうか迷いましたが、わたしが楽しいので家持ちにしてしまいました。
大きな魚介類とのバトルは楽しげだと思ったのですが、海中の相手と戦うのはとても大変そうで、アーレンスバッハ時代など一体どうやって……という気持ちになってきましたので、どんな主だったのかの描写はぺいっと投げました。
フェルディナンド様がいらっしゃれば、海中くらいなんてことない気もするのですけれど……。
(2025/05/23追記:その後、海での戦いの方法についての情報は出ました。)
ダームエルの好物をクリームがけにするかマヨ焼きにするかも悩みどころでした。結局は原作に出てきた別の食べ物に寄せてクリームを採用しましたが、マヨ焼きも好きだと思います。
2025/05/23 更新:
ストーリーに影響のないレベルの軽微な改稿と追記。
[本好きの下剋上ファン作品 No.4]
#ダムフィリ #フィリーネ #ダームエル #本好きファン小説
祈り方も知らなかったころ
フィリーネ8歳、ローゼマイン不在の子供部屋にて。将来結婚するダムフィリによる、ほんのりダムフィリ話。
あれはわたくしが八歳を迎えた冬。まだ祈り方も知らなかったころ。
「これで全部だと思います。確認していただけますか?」
「ありがとう、フィリーネ」
カルタの時間が終わり、片づけが始まります。わたくしはカルタが間違いなく全て揃っているかを一箱ずつ確認して、さらに大きな箱にまとめるお手伝いをしていました。もちろん、下級貴族の子供であるわたくしだけでは不十分ですから、もう一度大人か領主一族に見ていただく必要があります。そのさいに素早く確かめられるよう、カルタを文字順に揃えておくのです。
一年前、子供部屋に来たばかりのころは基本文字も覚えきれていなかったわたくしですが、少しも引っかかることなくカルタを並べることができるようになっていました。ローゼマイン様のおかげです。階級に関係なくお勉強ができる子供部屋を作り、わたくし達のように生活の苦しい下級貴族にはお金ではないもので教材を貸してくださったのです。いくら感謝をしても足りません。
「……大丈夫だ、確かに揃っている」
今日カルタをまとめているのはダームエル様です。ダームエル様は教師でも側仕えでもなくローゼマイン様の護衛騎士なのですが、目を配るのが上手で、困ったときにはすぐに助けてくださいます。ローゼマイン様のやり方を一番よくわかっているのもダームエル様のようで、下級騎士なのに、ヴィルフリート様もシャルロッテ様も頼りにしていらっしゃいます。もし彼がいなかったら子供部屋はもっと大変なことになっていたでしょう。ローゼマイン様が眠ってしまわれたのはとてもとても悲しいですが、ダームエル様が来てくださって良かったと思います。
「フィリーネはカルタを揃えるのも早くなったな」
わたくしが子供だからと下に見ることもなく、丁寧に接してくださるのも嬉しいです。ダームエル様に褒められると、わたくしの頑張りをわかってもらえたようで、とても元気が出るのです。
お父様もヨナサーラ様も、褒めてくださいませんから。
ヨナサーラ様は貴族らしく感情を隠してはいますが、本当はわたくしが絵本を読むのもお話を書くのも嫌だと思っているようで、家でお勉強をするのは大変なのです。子供部屋にはわたくしが何をしていても機嫌が悪くなる方はいませんから、ほっとします。今年はローゼマイン様がいらっしゃらず、ヴィルフリート様のことでピリピリしていますが、それでも家とは比べ物になりません。皆でお勉強ができて、ゲームに勝てばご褒美もいただける……ローゼマイン様の子供部屋が続けられるよう、わたくしもできるだけのことをしたいと思います。
「フィリーネ、絵本の時間ですよ」
ブリギッテ様が、お手伝いはここまでにして読み聞かせのほうに行くよう声をかけてくださいました。ブリギッテ様もお優しい方です。ダームエル様と同じローゼマイン様の護衛騎士で、中級貴族なのに嫌な顔ひとつせずにわたくし達下級の面倒も見てくださいます。子供とお話をしていない時は騎士らしく表情を引き締めて立っていますが、そういう時はとても凛々しくて格好いい、すてきな方なのです。
「騎士全員に伝えよ!」
突然、殿方の厳しい声が響きました。部屋に控えている騎士の一人がオルドナンツを受け取ったようです。オルドナンツは冬の主が現れたと言い、子供部屋は一気にざわついた雰囲気になりました。冬の主とは、とても大きくて強い力を持ち、何十人もの騎士が何日もかけて倒す、大変な魔物だそうです。
「こちらはお任せします」
「承知しております、ご武運を」
ダームエル様もブリギッテ様も、少し怖い顔をして大人達とお話しています。ヴィルフリート様やシャルロッテ様の護衛騎士もみな戦いに出て行くようです。領主一族の護衛騎士が主のお側を離れてまで倒さなければいけないなんて、どれほど恐ろしい魔物なのでしょう。
去年はよくわかっておらず、急に子供部屋から家に帰されたことに驚き、知らせがあるまでお城に行けなくなったことを残念に思っていましたが、今年はわかります。ひどい吹雪の中、ダームエル様達が命をかけて戦いに行くのです。少し想像しただけで、恥ずかしくも目に涙がたまってきました。
人前で泣くなどはしたないことです。涙をこぼさないよう、弱く少しずつまばたきをしていると、ダームエル様に声をかけられました。
「フィリーネ。心配いらない。騎士団は冬の主などに負けはしないよ」
危険な所に行くのは自分達だというのに、わたくしを安心させようとしてくださっているダームエル様の笑顔に、止めきれなくなった涙がぽろりとこぼれました。
「ダームエル様。ご、ご武運を……」
大人達の会話からいま覚えたばかりの挨拶を使うと、ダームエル様は手を伸ばして、わたくしの頭をそっと撫でてくださいました。
「ありがとう。……行って来る」
わたくしは涙を拭いて、ダームエル様とブリギッテ様のマントがそろって部屋を出て行くのを見送りました。
神よ。どなたにも、怪我などありませんように。
わたくしの拙い祈りは神に届いたのか届かなかったのか……それは定かではありませんが。撫でられた頭がふわふわと温かかったことも、一週間ほどで再会できたダームエルの笑顔も、とても嬉しかったことを良く覚えています。
今思えば、わたくしはあのころすでにダームエルを想っていたのかも知れません。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
そう、あれはこんな喜びでした。
「……ハァ。今度の主も手強かったが……
マティアスとラウレンツの連携がとても巧みになっていた。フェルディナンド様も相変わらずのご活躍でな。
覚悟していたよりは早く片付いて良かったよ」
「はい。ご無事で何よりです。
武勇の神アングリーフに、感謝を……」
わたくしは胸に満ちて行く温かさに突き動かされるまま、今は夫となったダームエルの腕に飛び込みました。
- 了 -
あとがき
お読みいただきありがとうございます。神に祈りを!
今回は子供部屋の状況など憶測(妄想)で書いた点が多いので、前以上に目をつぶっていただけたらと思います。
あとエックハルトとコルネリウスもきちんと活躍しています。(女性騎士は産休です)
感想、いいね、リアクション等は大変励みになります。少しでも好き要素がありましたらお寄せいただけますと幸いです。神に感謝を!
追記(2018/11/10):今日発売の『ふぁんぶっく3』情報により、夏の主のつじつま合わせがちょっとアレになりましたが、そのための書き直しはしないつもりです~。ご容赦ください。
改題(2025.10.21):
旧題『祈り方も知らなかった冬』
新題『祈り方も知らなかったころ』
普通に冬の話なのでこのタイトルをつけましたが、なにしろ『冬』ですから、なにかしらの期待をなさる方がどうしてもおられるようなので……
妥協しました(笑)
しかし、2018年に書いたものとあって、今読むといわゆる『解像度』的にも少々厳しいものがありますね……冬の主のことは部屋内の騎士に静かに伝えられるでしょうし、他にも……。
原則として作品は消さない主義ですので置いておきますけれども、いろいろご容赦いただけますと幸いです。
[本好きの下剋上ファン作品 No.03]
#ダムフィリ #本好きファン小説
フィリーネ8歳、ローゼマイン不在の子供部屋にて。将来結婚するダムフィリによる、ほんのりダムフィリ話。
あれはわたくしが八歳を迎えた冬。まだ祈り方も知らなかったころ。
「これで全部だと思います。確認していただけますか?」
「ありがとう、フィリーネ」
カルタの時間が終わり、片づけが始まります。わたくしはカルタが間違いなく全て揃っているかを一箱ずつ確認して、さらに大きな箱にまとめるお手伝いをしていました。もちろん、下級貴族の子供であるわたくしだけでは不十分ですから、もう一度大人か領主一族に見ていただく必要があります。そのさいに素早く確かめられるよう、カルタを文字順に揃えておくのです。
一年前、子供部屋に来たばかりのころは基本文字も覚えきれていなかったわたくしですが、少しも引っかかることなくカルタを並べることができるようになっていました。ローゼマイン様のおかげです。階級に関係なくお勉強ができる子供部屋を作り、わたくし達のように生活の苦しい下級貴族にはお金ではないもので教材を貸してくださったのです。いくら感謝をしても足りません。
「……大丈夫だ、確かに揃っている」
今日カルタをまとめているのはダームエル様です。ダームエル様は教師でも側仕えでもなくローゼマイン様の護衛騎士なのですが、目を配るのが上手で、困ったときにはすぐに助けてくださいます。ローゼマイン様のやり方を一番よくわかっているのもダームエル様のようで、下級騎士なのに、ヴィルフリート様もシャルロッテ様も頼りにしていらっしゃいます。もし彼がいなかったら子供部屋はもっと大変なことになっていたでしょう。ローゼマイン様が眠ってしまわれたのはとてもとても悲しいですが、ダームエル様が来てくださって良かったと思います。
「フィリーネはカルタを揃えるのも早くなったな」
わたくしが子供だからと下に見ることもなく、丁寧に接してくださるのも嬉しいです。ダームエル様に褒められると、わたくしの頑張りをわかってもらえたようで、とても元気が出るのです。
お父様もヨナサーラ様も、褒めてくださいませんから。
ヨナサーラ様は貴族らしく感情を隠してはいますが、本当はわたくしが絵本を読むのもお話を書くのも嫌だと思っているようで、家でお勉強をするのは大変なのです。子供部屋にはわたくしが何をしていても機嫌が悪くなる方はいませんから、ほっとします。今年はローゼマイン様がいらっしゃらず、ヴィルフリート様のことでピリピリしていますが、それでも家とは比べ物になりません。皆でお勉強ができて、ゲームに勝てばご褒美もいただける……ローゼマイン様の子供部屋が続けられるよう、わたくしもできるだけのことをしたいと思います。
「フィリーネ、絵本の時間ですよ」
ブリギッテ様が、お手伝いはここまでにして読み聞かせのほうに行くよう声をかけてくださいました。ブリギッテ様もお優しい方です。ダームエル様と同じローゼマイン様の護衛騎士で、中級貴族なのに嫌な顔ひとつせずにわたくし達下級の面倒も見てくださいます。子供とお話をしていない時は騎士らしく表情を引き締めて立っていますが、そういう時はとても凛々しくて格好いい、すてきな方なのです。
「騎士全員に伝えよ!」
突然、殿方の厳しい声が響きました。部屋に控えている騎士の一人がオルドナンツを受け取ったようです。オルドナンツは冬の主が現れたと言い、子供部屋は一気にざわついた雰囲気になりました。冬の主とは、とても大きくて強い力を持ち、何十人もの騎士が何日もかけて倒す、大変な魔物だそうです。
「こちらはお任せします」
「承知しております、ご武運を」
ダームエル様もブリギッテ様も、少し怖い顔をして大人達とお話しています。ヴィルフリート様やシャルロッテ様の護衛騎士もみな戦いに出て行くようです。領主一族の護衛騎士が主のお側を離れてまで倒さなければいけないなんて、どれほど恐ろしい魔物なのでしょう。
去年はよくわかっておらず、急に子供部屋から家に帰されたことに驚き、知らせがあるまでお城に行けなくなったことを残念に思っていましたが、今年はわかります。ひどい吹雪の中、ダームエル様達が命をかけて戦いに行くのです。少し想像しただけで、恥ずかしくも目に涙がたまってきました。
人前で泣くなどはしたないことです。涙をこぼさないよう、弱く少しずつまばたきをしていると、ダームエル様に声をかけられました。
「フィリーネ。心配いらない。騎士団は冬の主などに負けはしないよ」
危険な所に行くのは自分達だというのに、わたくしを安心させようとしてくださっているダームエル様の笑顔に、止めきれなくなった涙がぽろりとこぼれました。
「ダームエル様。ご、ご武運を……」
大人達の会話からいま覚えたばかりの挨拶を使うと、ダームエル様は手を伸ばして、わたくしの頭をそっと撫でてくださいました。
「ありがとう。……行って来る」
わたくしは涙を拭いて、ダームエル様とブリギッテ様のマントがそろって部屋を出て行くのを見送りました。
神よ。どなたにも、怪我などありませんように。
わたくしの拙い祈りは神に届いたのか届かなかったのか……それは定かではありませんが。撫でられた頭がふわふわと温かかったことも、一週間ほどで再会できたダームエルの笑顔も、とても嬉しかったことを良く覚えています。
今思えば、わたくしはあのころすでにダームエルを想っていたのかも知れません。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
そう、あれはこんな喜びでした。
「……ハァ。今度の主も手強かったが……
マティアスとラウレンツの連携がとても巧みになっていた。フェルディナンド様も相変わらずのご活躍でな。
覚悟していたよりは早く片付いて良かったよ」
「はい。ご無事で何よりです。
武勇の神アングリーフに、感謝を……」
わたくしは胸に満ちて行く温かさに突き動かされるまま、今は夫となったダームエルの腕に飛び込みました。
- 了 -
あとがき
お読みいただきありがとうございます。神に祈りを!
今回は子供部屋の状況など憶測(妄想)で書いた点が多いので、前以上に目をつぶっていただけたらと思います。
あとエックハルトとコルネリウスもきちんと活躍しています。(女性騎士は産休です)
感想、いいね、リアクション等は大変励みになります。少しでも好き要素がありましたらお寄せいただけますと幸いです。神に感謝を!
追記(2018/11/10):今日発売の『ふぁんぶっく3』情報により、夏の主のつじつま合わせがちょっとアレになりましたが、そのための書き直しはしないつもりです~。ご容赦ください。
改題(2025.10.21):
旧題『祈り方も知らなかった冬』
新題『祈り方も知らなかったころ』
普通に冬の話なのでこのタイトルをつけましたが、なにしろ『冬』ですから、なにかしらの期待をなさる方がどうしてもおられるようなので……
妥協しました(笑)
しかし、2018年に書いたものとあって、今読むといわゆる『解像度』的にも少々厳しいものがありますね……冬の主のことは部屋内の騎士に静かに伝えられるでしょうし、他にも……。
原則として作品は消さない主義ですので置いておきますけれども、いろいろご容赦いただけますと幸いです。
[本好きの下剋上ファン作品 No.03]
#ダムフィリ #本好きファン小説
遠仕文官フィリーネのドキドキ☆貴族院五年生
原作番外編『ハンネローレの貴族院五年生』の時間軸(4話の後)。なんでも読みたい方向け。ダームエルと婚約済のフィリーネに対してほんのり友達以上を感じているユーディット視点のユデフィリ。ほんの少しだけ破廉恥です。
ローゼマイン様との会合であるお食事が終わると、フィリーネはすぐにお仕事を始めました。指示待ちで止めていたぶんをまとめて済ませてしまいたいと、はりきって紙の山に向かっています。
……紙なのに山なのです。
同じ高さの木札だったとしても大変な量ですのに、フィリーネは全く動じずに片付けて行きます。
全てが書類ではなく、目を通すだけのお話も多いから大したことではないとフィリーネは言っていましたが、お話であっても誤字などがないか慎重に読まなければいけないのです。
いくらあの、フェルディナンド様やハルトムートの一族や、結果的に無茶振りをしがちなローゼマイン様などに鍛えられ、たくさんのお仕事をこなせるようになったフィリーネでも、根を詰めすぎではないでしょうか。それに、ちょっとしたお話をする時間も取れないのは寂しいです。
……わたくしはもう、六年生なのですよ。
貴族院でフィリーネと共同のお部屋を使えるのは今年が最後になりますし、春になれば隣の領地のローゼマイン様の元に参ります。さらに一年後、フィリーネが成人すればまた一緒にお仕えすることができるかも知れませんが、フィリーネの移動の準備はわたくしよりも大変なはずです。フィリーネがエーレンフェストを出るよりも先に、わたくしのほうが結婚のため戻る可能性も高いでしょう。わたくし達が一緒にいられる時間はもう、この冬くらいしかないのです。
……わたくしとお別れしても、フィリーネは気にならないのでしょうか?
胸が押されるような、軽く息が詰まるような不快感に、わたくしは首を振りました。
……そんなことはないでしょう。
こんな考えが頭に浮かんでしまうなんて、八つ当たりみたいなものです。そうわかっていても、平然とお仕事をしているように見えるフィリーネの姿に、わたくしの心は波立ってしまいます。
わたくしは子供じみた感情を持て余したまま、寝台に入りました。
今日は土の日。講義のないお休みの日です。そのせいか、昨晩のフィリーネはいつもよりさらにお仕事に打ち込んでいました。就寝ぎりぎりまで本を読んでいらしたローゼマイン様をも超えそうな勢いでペンを走らせていたのです。あれでは起きるのがいつになるかわからないのではないでしょうか。
案の定、フィリーネは二の鐘が鳴っても起きてきませんでした。フィリーネの側仕えのイズベルガも、フィリーネが頑張っているのをよく知っていますし、本当に差し障りの出てくる時間を知っていますから、厳しく起こしたりはしません。
目が合ったわたくしに「困ったこと」とおどけるように笑いかけると、イズベルガはフィリーネが眠っていてもできる仕事をはじめました。
わたくしが食堂から戻っても、フィリーネはまだ寝台から出てきていませんでした。これ以上寝ていては朝食をとりそびれてしまいます。さすがに起こす必要があるでしょう。寝台に向かおうとしたイズベルガを、わたくしは呼び止めました。
「わたくしにまかせていただけませんか?」
イズベルガは一瞬目を丸くしましたが、すぐにクスリと笑って、わたくしを通すように一歩下がってくれました。
「フィリーネ、失礼しますよ」
天蓋の下に入ると、フィリーネは横向きに軽く身体を丸め、顔だけを少し天に向けた格好で寝息を立てていました。小柄なフィリーネがこうしていると、子供のようでとても可愛らしいです。大人びた雰囲気を望んでいる本人には気の毒ですが、顔立ちから考えてもフィリーネは少女の面影を持ったまま成人するでしょう。わたくしはそれも悪くないと思うのですが……
……まったく、ダームエルは罪作りです。
状況に追い詰められてようやくフィリーネと婚約したダームエルですが、いまだにフィリーネの心を完全に掴めてはいないようで、フィリーネは時々ブリギッテ様と自分を比べて気を落としています。
ダームエルの気持ちがフィリーネに移っていることは側から見ているわたくしにもわかることですのに、肝心のフィリーネに伝わっていないのです。もうブリギッテ様を求めてはいないとはっきり言ってしまえばいいと思うのですが、ダームエルは自分がフィリーネの夫として不足があると考えていて強く出られないようなのです。
ダームエルらしいと言えばダームエルらしいですが、不甲斐なさを感じてしまうのはどうしようもありません。
……ダームエルにはもったいないような気がしてきました。
すんなりと伸びているけれどただただまっすぐというわけでもない、ほど良くふわふわとしている蜂蜜色の髪も、丸すぎず細すぎず見ていると触りたくなってくる頬も、ダームエルが独り占めにすることになるかと思うと面白くありません。
わたくしは少し唇をとがらせましたが、同時にはっと気がつきました。今のフィリーネの寝姿は、今しか見ることができません。成長中の、五年生のフィリーネがまぶたを閉じているさまは、ダームエルですら見ることのないもののはずです。
側仕えとわたくしだけの特権。そう思うとわくわくしてきました。今のうちに、ダームエルも知らないフィリーネの愛くるしい様子をたくさん見ておくのです。
……どうやって起こそうかしら?
急にゆさぶったり大きな声をかけたりして驚かせたら可哀想ですし……ダームエルも得られない経験かと思うと、指先がうずうずしてきます。
わたくしはまず、触れる程度の力で頬をそっとつついてみました。フィリーネはなんの反応もしません。何度かつついてみたあと、顔のふちまで指を滑らせてあごの線を軽く撫でてみましたが、まだ何も動きがありません。よほど深く眠っているのでしょう。
悪戯好きの神として知られるリーベスクヒルフェのお導きでもあったかのように、わたくしの心にはさらなる興味と衝動が湧き上がって来ました。
「フィリーネ」
小さな声で呼びかけて、耳の下に触れます。少しだけ、まぶたが動いたような気がしました。
「……フィリーネ」
声は小声のまま、わたくしの顔を耳に近づけて、もう一度。指先では首を撫で下ろします。
「……ん……ぅ……」
小ぶりな唇から、息が漏れました。
「朝……だぞ」
思いつくままに、わたくしはできるだけ低い声を出しました。殿方のような言葉がイズベルガ達にも聞こえないよう、耳元に口を寄せて。
「ん……」
そのままふっと息を吹きかけると、フィリーネはまた少し声を漏らしました。わたくしはますます楽しくなって、フィリーネの耳の周りを指でこそこそとくすぐります。髪と同じ蜂蜜色のフィリーネの眉がぎゅっと寄りました。
「んぅ……」
触らないで欲しい、というように肩がすくめられます。ならば、もっと触れるしかないでしょう。わたくしはより熱心に耳の後ろや隠しきれていない首筋をまさぐりました。
「ふ……ぁ……はぁっ……」
フィリーネが大きく息を吐きました。もうそろそろ目も覚めるでしょう。わたくしのちょっとした悪ふざけもおしまいです。仕上げとばかりに唇を近づけ、思い切り耳に息を吹きかけると、フィリーネは雷に打たれでもしたかのように全身をびくつかせました。
「あんっ! はぁ…… や、やめてくぁさいませ……! ……だーむえぅ……」
……わたくしも、雷に打たれたように止まってしまいました。
「フィリーネ!?」
「はいっ!? ……ふぇ、え、あ、ユーディット……?」
飛び起きたフィリーネがみるみるうちに耳まで赤くなります。
……自分がどのように寝ぼけたか、わかっているのですか。
なぜダームエルと間違えたのか。つい間違えるようなことを、つい間違えるほど、日常的にしているのか。問うまでもなく、答えが書いてあるような顔ではありませんか。
「ろ、ろ、ろ、ローゼマインさまーー!!!」
混乱のあまりオルドナンツの魔石を取り出したわたくしと、それを必死に止めようとしているフィリーネの姿に、飛んできたイズベルガとわたくしの側仕えのフレデリカは顔を見合わせて首を傾げました。
おしまい
お読みいただきありがとうございます。
ユーディットはフィリーネもダームエルも両方好きで、それゆえに二人の間で我慢していることも多そうな気がしたので、少しばかり気晴らしをしてもらいたちような気持ちで書きました。……気晴らしになったかどうかわからないようなオチがつきましたけれど。
少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
※なお、ダームエルは冬を到来させてはいません。あくまで衣服を崩さずにできる範囲で愛でています。ただし魔力は流しています、と言いますか、貴族院で会えなくなる前に全力で流しましたので、もしバレたらすごい目で見られたりすごい目で睨まれたりすると思います。隠蔽の神 フェアベルッケンのご加護がありますように。
2018.10.10 『外伝 一年生』にフレデリカの名前が出ましたので、書き加えました。
2020.6.2 ユーディットの卒業後の進路の予想が変わってきたため、本文を少し書き直しました。
2022.7.24 ユーディットとフィリーネの卒業後の予想がまた少し変わったため、細かい改稿を行いました。フィリーネの貴族院での側仕えについても新規の情報がありましたが、イズベルガの可能性が高いだろうと思い、イズベルガのままにしています。(イズベルガが紹介した他の縁者になっている可能性もありますが、それはかなり低いだろうと考えられます。)
2025.10.20 微細な修正。2022年7月より後にも情報追加があり、ユーディットの進路予想は変わってきていますが、もう内容変更はいたしません。
[本好きの下剋上ファン作品 No.02]
#ダムフィリ #ユデフィリ #ユーディット #フィリーネ #本好きファン小説
原作番外編『ハンネローレの貴族院五年生』の時間軸(4話の後)。なんでも読みたい方向け。ダームエルと婚約済のフィリーネに対してほんのり友達以上を感じているユーディット視点のユデフィリ。ほんの少しだけ破廉恥です。
ローゼマイン様との会合であるお食事が終わると、フィリーネはすぐにお仕事を始めました。指示待ちで止めていたぶんをまとめて済ませてしまいたいと、はりきって紙の山に向かっています。
……紙なのに山なのです。
同じ高さの木札だったとしても大変な量ですのに、フィリーネは全く動じずに片付けて行きます。
全てが書類ではなく、目を通すだけのお話も多いから大したことではないとフィリーネは言っていましたが、お話であっても誤字などがないか慎重に読まなければいけないのです。
いくらあの、フェルディナンド様やハルトムートの一族や、結果的に無茶振りをしがちなローゼマイン様などに鍛えられ、たくさんのお仕事をこなせるようになったフィリーネでも、根を詰めすぎではないでしょうか。それに、ちょっとしたお話をする時間も取れないのは寂しいです。
……わたくしはもう、六年生なのですよ。
貴族院でフィリーネと共同のお部屋を使えるのは今年が最後になりますし、春になれば隣の領地のローゼマイン様の元に参ります。さらに一年後、フィリーネが成人すればまた一緒にお仕えすることができるかも知れませんが、フィリーネの移動の準備はわたくしよりも大変なはずです。フィリーネがエーレンフェストを出るよりも先に、わたくしのほうが結婚のため戻る可能性も高いでしょう。わたくし達が一緒にいられる時間はもう、この冬くらいしかないのです。
……わたくしとお別れしても、フィリーネは気にならないのでしょうか?
胸が押されるような、軽く息が詰まるような不快感に、わたくしは首を振りました。
……そんなことはないでしょう。
こんな考えが頭に浮かんでしまうなんて、八つ当たりみたいなものです。そうわかっていても、平然とお仕事をしているように見えるフィリーネの姿に、わたくしの心は波立ってしまいます。
わたくしは子供じみた感情を持て余したまま、寝台に入りました。
今日は土の日。講義のないお休みの日です。そのせいか、昨晩のフィリーネはいつもよりさらにお仕事に打ち込んでいました。就寝ぎりぎりまで本を読んでいらしたローゼマイン様をも超えそうな勢いでペンを走らせていたのです。あれでは起きるのがいつになるかわからないのではないでしょうか。
案の定、フィリーネは二の鐘が鳴っても起きてきませんでした。フィリーネの側仕えのイズベルガも、フィリーネが頑張っているのをよく知っていますし、本当に差し障りの出てくる時間を知っていますから、厳しく起こしたりはしません。
目が合ったわたくしに「困ったこと」とおどけるように笑いかけると、イズベルガはフィリーネが眠っていてもできる仕事をはじめました。
わたくしが食堂から戻っても、フィリーネはまだ寝台から出てきていませんでした。これ以上寝ていては朝食をとりそびれてしまいます。さすがに起こす必要があるでしょう。寝台に向かおうとしたイズベルガを、わたくしは呼び止めました。
「わたくしにまかせていただけませんか?」
イズベルガは一瞬目を丸くしましたが、すぐにクスリと笑って、わたくしを通すように一歩下がってくれました。
「フィリーネ、失礼しますよ」
天蓋の下に入ると、フィリーネは横向きに軽く身体を丸め、顔だけを少し天に向けた格好で寝息を立てていました。小柄なフィリーネがこうしていると、子供のようでとても可愛らしいです。大人びた雰囲気を望んでいる本人には気の毒ですが、顔立ちから考えてもフィリーネは少女の面影を持ったまま成人するでしょう。わたくしはそれも悪くないと思うのですが……
……まったく、ダームエルは罪作りです。
状況に追い詰められてようやくフィリーネと婚約したダームエルですが、いまだにフィリーネの心を完全に掴めてはいないようで、フィリーネは時々ブリギッテ様と自分を比べて気を落としています。
ダームエルの気持ちがフィリーネに移っていることは側から見ているわたくしにもわかることですのに、肝心のフィリーネに伝わっていないのです。もうブリギッテ様を求めてはいないとはっきり言ってしまえばいいと思うのですが、ダームエルは自分がフィリーネの夫として不足があると考えていて強く出られないようなのです。
ダームエルらしいと言えばダームエルらしいですが、不甲斐なさを感じてしまうのはどうしようもありません。
……ダームエルにはもったいないような気がしてきました。
すんなりと伸びているけれどただただまっすぐというわけでもない、ほど良くふわふわとしている蜂蜜色の髪も、丸すぎず細すぎず見ていると触りたくなってくる頬も、ダームエルが独り占めにすることになるかと思うと面白くありません。
わたくしは少し唇をとがらせましたが、同時にはっと気がつきました。今のフィリーネの寝姿は、今しか見ることができません。成長中の、五年生のフィリーネがまぶたを閉じているさまは、ダームエルですら見ることのないもののはずです。
側仕えとわたくしだけの特権。そう思うとわくわくしてきました。今のうちに、ダームエルも知らないフィリーネの愛くるしい様子をたくさん見ておくのです。
……どうやって起こそうかしら?
急にゆさぶったり大きな声をかけたりして驚かせたら可哀想ですし……ダームエルも得られない経験かと思うと、指先がうずうずしてきます。
わたくしはまず、触れる程度の力で頬をそっとつついてみました。フィリーネはなんの反応もしません。何度かつついてみたあと、顔のふちまで指を滑らせてあごの線を軽く撫でてみましたが、まだ何も動きがありません。よほど深く眠っているのでしょう。
悪戯好きの神として知られるリーベスクヒルフェのお導きでもあったかのように、わたくしの心にはさらなる興味と衝動が湧き上がって来ました。
「フィリーネ」
小さな声で呼びかけて、耳の下に触れます。少しだけ、まぶたが動いたような気がしました。
「……フィリーネ」
声は小声のまま、わたくしの顔を耳に近づけて、もう一度。指先では首を撫で下ろします。
「……ん……ぅ……」
小ぶりな唇から、息が漏れました。
「朝……だぞ」
思いつくままに、わたくしはできるだけ低い声を出しました。殿方のような言葉がイズベルガ達にも聞こえないよう、耳元に口を寄せて。
「ん……」
そのままふっと息を吹きかけると、フィリーネはまた少し声を漏らしました。わたくしはますます楽しくなって、フィリーネの耳の周りを指でこそこそとくすぐります。髪と同じ蜂蜜色のフィリーネの眉がぎゅっと寄りました。
「んぅ……」
触らないで欲しい、というように肩がすくめられます。ならば、もっと触れるしかないでしょう。わたくしはより熱心に耳の後ろや隠しきれていない首筋をまさぐりました。
「ふ……ぁ……はぁっ……」
フィリーネが大きく息を吐きました。もうそろそろ目も覚めるでしょう。わたくしのちょっとした悪ふざけもおしまいです。仕上げとばかりに唇を近づけ、思い切り耳に息を吹きかけると、フィリーネは雷に打たれでもしたかのように全身をびくつかせました。
「あんっ! はぁ…… や、やめてくぁさいませ……! ……だーむえぅ……」
……わたくしも、雷に打たれたように止まってしまいました。
「フィリーネ!?」
「はいっ!? ……ふぇ、え、あ、ユーディット……?」
飛び起きたフィリーネがみるみるうちに耳まで赤くなります。
……自分がどのように寝ぼけたか、わかっているのですか。
なぜダームエルと間違えたのか。つい間違えるようなことを、つい間違えるほど、日常的にしているのか。問うまでもなく、答えが書いてあるような顔ではありませんか。
「ろ、ろ、ろ、ローゼマインさまーー!!!」
混乱のあまりオルドナンツの魔石を取り出したわたくしと、それを必死に止めようとしているフィリーネの姿に、飛んできたイズベルガとわたくしの側仕えのフレデリカは顔を見合わせて首を傾げました。
おしまい
お読みいただきありがとうございます。
ユーディットはフィリーネもダームエルも両方好きで、それゆえに二人の間で我慢していることも多そうな気がしたので、少しばかり気晴らしをしてもらいたちような気持ちで書きました。……気晴らしになったかどうかわからないようなオチがつきましたけれど。
少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
※なお、ダームエルは冬を到来させてはいません。あくまで衣服を崩さずにできる範囲で愛でています。ただし魔力は流しています、と言いますか、貴族院で会えなくなる前に全力で流しましたので、もしバレたらすごい目で見られたりすごい目で睨まれたりすると思います。隠蔽の神 フェアベルッケンのご加護がありますように。
2018.10.10 『外伝 一年生』にフレデリカの名前が出ましたので、書き加えました。
2020.6.2 ユーディットの卒業後の進路の予想が変わってきたため、本文を少し書き直しました。
2022.7.24 ユーディットとフィリーネの卒業後の予想がまた少し変わったため、細かい改稿を行いました。フィリーネの貴族院での側仕えについても新規の情報がありましたが、イズベルガの可能性が高いだろうと思い、イズベルガのままにしています。(イズベルガが紹介した他の縁者になっている可能性もありますが、それはかなり低いだろうと考えられます。)
2025.10.20 微細な修正。2022年7月より後にも情報追加があり、ユーディットの進路予想は変わってきていますが、もう内容変更はいたしません。
[本好きの下剋上ファン作品 No.02]
#ダムフィリ #ユデフィリ #ユーディット #フィリーネ #本好きファン小説


ダムフィリほのぼの。いわゆるメタネタがあります。
……あぁ、もうこんな時間か。
毎週観ているテレビ番組の時間が近いと気づき、ダームエルは食器を片付けていた手を止めた。
フィリーネも楽しみにしている番組で、時間になっても自室から出て来なかった場合、互いに声をかけるのが習慣化している。
ダームエルはリビングのテレビをつけてチャンネルを合わせると、フィリーネの部屋に向かった。
「フィリーネ」
ノックをするが、返事がない。
「フィリーネ。
……フィー。
『本好き』が始まってしまうぞ」
何回かノックしても、ドアの向こうで人が動く気配はない。ダームエルは仕方なくドアノブに手をかける。ドアはすんなりと開いた。
「……フィー?」
見ると、フィリーネはベッドの上で寝息をたてていた。何をしていて力尽きたのか、頭の横には端末が転がっている。
……最近、ばたばたしていたからな。
部屋に人が入って来ても目を覚まさないなど、どれほど疲れているのか。心配ではあるが、急病などではなさそうだ。ダームエルは軽く安堵の息を吐くと、目を細めてフィリーネに近づいた。
ゆるく閉ざされた瞼に、髪と同じ蜂蜜色の睫毛。わずかに開いている唇。少し首をかしげるようにして、くたりと投げ出されている小柄な体。無防備な寝姿が、触れられる距離にくる。
可能な限り低い年齢でダームエルと結婚したフィリーネは、こうして見るとまだまだあどけなく、微笑ましい。だが、学業と仕事を両立する勤勉さや芯の強さは、決して子供と侮れるものではない。今のダームエルにとっては可愛くて仕方ないし、尊敬もできる、代えなど存在しない大切な伴侶だ。
「ん……
ひゃあ!?」
ダームエルが『そーっと』起こすと、フィリーネは唇を押さえて飛び起きた。
「なっ、ダ、ダ……」
みるみるうちに顔を赤くしたが、すぐに「あっ」と気付く。
「始まってしまいましたか!?」
「いや、まだギリギリ間に合う」
「良かった……!」
頰を紅潮させたまま身を寄せて来たフィリーネを一度軽く抱きしめて、ダームエルはリビングに引き返した。
二人並んでソファに腰を下ろすと、待っていたかのように番組が始まる。
主題歌に合わせて軽くリズムを取りながら、二人は目の前に広がる異世界に入って行った。
おしまい
お読みいただきありがとう存じます。
タイトル通りの動機で書いたものですが、『その作品のキャラが、その作品を読んでいる』みたいなシチュエーションもとても好きなので混ぜてみました。せっかくの時事ネタですし。
2021年追記:
アニメ化が発表されたころの作品です。正直にわたしの感覚を言うと「フィー」という響きがフィリーネに合っているとはあまり感じないのですけれど、それを唇にのせているダームエルはとっても甘そうだと思ったので採用しました。
[本好きの下剋上ファン作品 No.9]
#ダムフィリ #ほんずき現パロ #フィリーネ #ダームエル #本好きファン小説