ナカミヱズログ

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既聴オルドナンツをスルーなんてしないアウブ・エーレンフェストの短い話

ユレーヴェ終盤ごろ。エーレンフェストの街の結界についてなど、独自の解釈があります。





 そのオルドナンツはいつも、夕食を終えたころにやってくる。

「フェルディナンドです。今夜は一度神殿に戻ります。結界に近づいたころあらためて連絡します」

 了承の返事を飛ばし、私はため息をついた。

「ハァ……またか」

 フェルディナンドは収穫祭のため直轄地を回っている最中である。
 さほど遠くない村ばかり担当しているし、フェルディナンドが単騎で駆ける騎獣の速さと言えば凡庸な貴族とは比べ物にならないが、それでも今すぐに戻ってくるものではない。
 おそらく鐘半分くらいはかかり、到着の連絡が来るまでに七の鐘は過ぎてしまうだろう。普通ならば街の結界への出入りの許可などとても出せない時間である。

 しかし、弟が神殿に戻ってくる理由はたった一つ。ローゼマインの状態を見るためだ。そしてそれは私にとっても小さいことではない。ローゼマインは養女にしてまで保護を決めた娘であり、私の実の娘の命を救い身代わりのように毒に倒れてしまった恩人でもある。
 眠りの長さに周囲も心を痛める中、ようやく少しばかりの変化が見られたならば、気にかけるのは当然だ。夜半にたびたび戻ってくるのも労うべきことだと思う。
 だが、それでも。

 ……今宵はフロレンツィアが了承の合図を出してくれていたというのに。

 寝台にあがったあとにオルドナンツが届くことを考えると、落ち着いて妻の部屋に足を運ぶこともできない。
 オルドナンツを排除する方法はないわけではないが、もし連絡が取れないとなったら弟はよけいに心を揺らすことになるだろう。苦労をかけている自覚はあるが、私とてそれをやたらに増やしたいと考えているわけではないのだ。

 ……早く起きてくれ、ローゼマイン。私のためにも。

 フロレンツィアの部屋がある方向を未練がましく見つめながら、私は仕方なく読みかけの書類に手を伸ばした。







[本好きの下剋上ファン作品 No.7]
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