シュラートラウムの祝福と共に 原作本編終了より数年後。結婚済ダムフィリ(やや甘め?)……と、ダムフィリなのにお名前が出てくるハンネローレ様という武力。 アレキサンドリアの海にたまに出るという強大な魔獣の討伐を終え、ダームエルが帰って来ました。連絡があった通り大変に疲れてはいるものの怪我はなく、きちんと食欲もあるそうです。安堵の息をついて、一緒に夕食をとります。 ダームエルはこちらに来てから好物になったお魚のクリームがけに目を細めながら、皆の活躍を語ってくれました。わたくしもよく存じているアウブの護衛騎士達からまだ馴染みの薄い方まで、たくさんの名前が出て来ます。それぞれの武勇が目に浮かぶようで、ただ戦況を案じていた胸に、踊るような気持ちや知識としての興味が混ざって行きます。 ……ダームエルのお話はまとまっているので取材がしやすくて助かる、とローデリヒが言っていましたが、その通りですね。 そんなお話を、誰よりもたくさん聞くことのできる立場になれた喜びも込み上げてきます。「今日はゆっくりとお休みくださいね」「あぁ、そうさせてもらうよ」 全身鎧のまま帰宅したため先にお風呂を済ませていたダームエルに就寝の挨拶をして、わたくしは自室に戻りました。 雑事を少々こなし、お風呂に入ります。いつもより温まったような気分でお風呂を終えると、部屋ではダームエルがお茶を飲んでいました。「……お疲れではないのですか?」 わたくしが幾度か瞬きながらそう言うと、ダームエルは困ったような、気まずいような、それでいて少し甘えるような、微妙な表情でわたくしを見ました。「ただ共寝するだけになるだろうが……邪魔だろうか?」「いいえ、いらしてください」 こういう時、ダームエルはちょっぴり可愛らしくなるのです。お断りなどするはずがありません。 相好を崩しながら、わたくしも軽くお茶をいただいて、寝台に上がりました。 すぐ隣にいてくれることが嬉しくて、嬉しくて、ついダームエルの肩に頭をすり寄せると、ダームエルもわたくしに身を寄せてくれます。そのままやんわりと温もりを確かめ合っていると、ふと、ダームエルが口を開きました。「……フィリーネはなぜ、私を、その……想うようになってくれたんだい?」 わたくしはしばし考え込みました。そう問われると、すぐには言葉が出ません。 幼い憧れだったころから、他にない感覚を共有するようになった今まで、わたくしはずっとダームエルに惹かれたまま生きています。誠実なところも、一生懸命なところも、温かい笑顔も、優しい手のひらも、力強い腕も、熱い胸も、みんな大好きなのです。「……わたくし、ダームエルの素敵なところを山ほど知っておりますから、言葉にするのは難しいのですけれど…… ダームエルが素敵だと気が付くようになったのはきっと、ダームエルがどなたにでも優しいからです。 ダームエルは、自分が嬉しい時でも悲しい時でも他の方に優しく……他の方のありようを認めることができるでしょう? ですからわたくしは、そんなダームエルにもっと認められて、隣を歩いて行けるようになりたいと思ったのです。 そして、ダームエルが疲れてしまったときには、休みを取れる場所のような者でありたい……」「……今、聞くべきではなかったな」 ダームエルは頬を赤らめて、観念した、とばかりにわたくしを抱きしめました。 ほんのりと魔力が伝わってきて、全身を熱が駆け巡ろうとします。わたくしは、ゆだねてしまいたい衝動に抗い、ぐっと拳を握りました。「体を休めることも騎士の務めでしょう? 今は……『ダメですよ』」 ハンネローレ様の物真似をすると、ダームエルは腕の力をゆるめました。ローゼマイン様からこっそりと側近だけの間に広まったこの物真似は、茶目っ気と温かみがあり、本物への賞賛を含んでいますが、意味合いはかなりきつい制止です。 ダームエルはひどく情けない顔を作って見せてから、フフッと笑いました。わたくしも一緒になってクスクスと肩を揺らします。 ……夢の神 シュラートラウムよ、今夜もわたくし達をお守りください。 やがて訪れた祝福は、願いどおりとても安らかなものでした。 - 了 -お読みいただきありがとうございます。 感想、いいね、リアクション等は大変励みになります。少しでも好き要素がありましたらお寄せいただけますと幸いです。以下、裏話。拙作No.3『祈り方も知らなかったころ』でダームエルが帰宅した後のお話です。ダームエルがアレキサンドリアの大規模魔獣討伐に初参戦するころ、すでに邸宅を持っているかどうか迷いましたが、わたしが楽しいので家持ちにしてしまいました。大きな魚介類とのバトルは楽しげだと思ったのですが、海中の相手と戦うのはとても大変そうで、アーレンスバッハ時代など一体どうやって……という気持ちになってきましたので、どんな主だったのかの描写はぺいっと投げました。フェルディナンド様がいらっしゃれば、海中くらいなんてことない気もするのですけれど……。(2025/05/23追記:その後、海での戦いの方法についての情報は出ました。)ダームエルの好物をクリームがけにするかマヨ焼きにするかも悩みどころでした。結局は原作に出てきた別の食べ物に寄せてクリームを採用しましたが、マヨ焼きも好きだと思います。2025/05/23 更新:ストーリーに影響のないレベルの軽微な改稿と追記。[本好きの下剋上ファン作品 No.4]#ダムフィリ #フィリーネ #ダームエル #本好きファン小説 本好きファン作品/小説* 2018/10/13(Sat) 20:04
原作本編終了より数年後。結婚済ダムフィリ(やや甘め?)……と、ダムフィリなのにお名前が出てくるハンネローレ様という武力。
アレキサンドリアの海にたまに出るという強大な魔獣の討伐を終え、ダームエルが帰って来ました。連絡があった通り大変に疲れてはいるものの怪我はなく、きちんと食欲もあるそうです。安堵の息をついて、一緒に夕食をとります。
ダームエルはこちらに来てから好物になったお魚のクリームがけに目を細めながら、皆の活躍を語ってくれました。わたくしもよく存じているアウブの護衛騎士達からまだ馴染みの薄い方まで、たくさんの名前が出て来ます。それぞれの武勇が目に浮かぶようで、ただ戦況を案じていた胸に、踊るような気持ちや知識としての興味が混ざって行きます。
……ダームエルのお話はまとまっているので取材がしやすくて助かる、とローデリヒが言っていましたが、その通りですね。
そんなお話を、誰よりもたくさん聞くことのできる立場になれた喜びも込み上げてきます。
「今日はゆっくりとお休みくださいね」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
全身鎧のまま帰宅したため先にお風呂を済ませていたダームエルに就寝の挨拶をして、わたくしは自室に戻りました。
雑事を少々こなし、お風呂に入ります。いつもより温まったような気分でお風呂を終えると、部屋ではダームエルがお茶を飲んでいました。
「……お疲れではないのですか?」
わたくしが幾度か瞬きながらそう言うと、ダームエルは困ったような、気まずいような、それでいて少し甘えるような、微妙な表情でわたくしを見ました。
「ただ共寝するだけになるだろうが……邪魔だろうか?」
「いいえ、いらしてください」
こういう時、ダームエルはちょっぴり可愛らしくなるのです。お断りなどするはずがありません。
相好を崩しながら、わたくしも軽くお茶をいただいて、寝台に上がりました。
すぐ隣にいてくれることが嬉しくて、嬉しくて、ついダームエルの肩に頭をすり寄せると、ダームエルもわたくしに身を寄せてくれます。そのままやんわりと温もりを確かめ合っていると、ふと、ダームエルが口を開きました。
「……フィリーネはなぜ、私を、その……想うようになってくれたんだい?」
わたくしはしばし考え込みました。そう問われると、すぐには言葉が出ません。
幼い憧れだったころから、他にない感覚を共有するようになった今まで、わたくしはずっとダームエルに惹かれたまま生きています。誠実なところも、一生懸命なところも、温かい笑顔も、優しい手のひらも、力強い腕も、熱い胸も、みんな大好きなのです。
「……わたくし、ダームエルの素敵なところを山ほど知っておりますから、言葉にするのは難しいのですけれど……
ダームエルが素敵だと気が付くようになったのはきっと、ダームエルがどなたにでも優しいからです。
ダームエルは、自分が嬉しい時でも悲しい時でも他の方に優しく……他の方のありようを認めることができるでしょう?
ですからわたくしは、そんなダームエルにもっと認められて、隣を歩いて行けるようになりたいと思ったのです。
そして、ダームエルが疲れてしまったときには、休みを取れる場所のような者でありたい……」
「……今、聞くべきではなかったな」
ダームエルは頬を赤らめて、観念した、とばかりにわたくしを抱きしめました。
ほんのりと魔力が伝わってきて、全身を熱が駆け巡ろうとします。わたくしは、ゆだねてしまいたい衝動に抗い、ぐっと拳を握りました。
「体を休めることも騎士の務めでしょう?
今は……『ダメですよ』」
ハンネローレ様の物真似をすると、ダームエルは腕の力をゆるめました。ローゼマイン様からこっそりと側近だけの間に広まったこの物真似は、茶目っ気と温かみがあり、本物への賞賛を含んでいますが、意味合いはかなりきつい制止です。
ダームエルはひどく情けない顔を作って見せてから、フフッと笑いました。わたくしも一緒になってクスクスと肩を揺らします。
……夢の神 シュラートラウムよ、今夜もわたくし達をお守りください。
やがて訪れた祝福は、願いどおりとても安らかなものでした。
- 了 -
お読みいただきありがとうございます。
感想、いいね、リアクション等は大変励みになります。少しでも好き要素がありましたらお寄せいただけますと幸いです。
以下、裏話。
拙作No.3『祈り方も知らなかったころ』でダームエルが帰宅した後のお話です。
ダームエルがアレキサンドリアの大規模魔獣討伐に初参戦するころ、すでに邸宅を持っているかどうか迷いましたが、わたしが楽しいので家持ちにしてしまいました。
大きな魚介類とのバトルは楽しげだと思ったのですが、海中の相手と戦うのはとても大変そうで、アーレンスバッハ時代など一体どうやって……という気持ちになってきましたので、どんな主だったのかの描写はぺいっと投げました。
フェルディナンド様がいらっしゃれば、海中くらいなんてことない気もするのですけれど……。
(2025/05/23追記:その後、海での戦いの方法についての情報は出ました。)
ダームエルの好物をクリームがけにするかマヨ焼きにするかも悩みどころでした。結局は原作に出てきた別の食べ物に寄せてクリームを採用しましたが、マヨ焼きも好きだと思います。
2025/05/23 更新:
ストーリーに影響のないレベルの軽微な改稿と追記。
[本好きの下剋上ファン作品 No.4]
#ダムフィリ #フィリーネ #ダームエル #本好きファン小説