フィリーネにも喋らせてあげてください!(仮題) ダムフィリ2000文字程度。ダームエル視点。ギャグ。わたくし、コミカライズ四部10のおかげで無事に奇行に走ることができましたので、ダームエルにも奇行に走っていただきました。(意訳:コミカライズ四部10巻かきおろしのフィリーネさんの姿に大興奮して書いたものです)原作との整合性はやや抑えめ。「ダームエル様、湯加減はよろしいでしょうか」「あぁ、ちょうど良いよ」 フィリーネが初めて青色巫女見習いとして向かう祈念式の旅に、私は護衛という名目で同行することになった。しかし護衛だけすれば良いわけではない。神事の流れに慣れた者としてフィリーネに助言をしたり、会食には共に参加したりと、状況に応じた対応が求められている。 幸いにも旅の初日はつつがなく進んだ。私達の後ろにローゼマイン様を見ているであろうギーべは本館で歓待したがっていたが、私達はそれを振り切って青色神官や巫女が使う離れに落ち着くことができた。 今はフィリーネも私も風呂に入っている。あとは軽く明日の予定を確認して寝るだけだ。緊張がほぐれてきて、私は少し体の力を抜いた。 力を抜いている場合ではなかったと気づいたのは、風呂を終えてすぐのことだった。 私の世話をするフランが用意していたのは寝間着。これから就寝するのだから当然だが、寝間着だ。フィリーネはまだ風呂から出ていないが、やはり寝間着で出てくるだろう。 ……寝間着!? 瞬間、フェアドレンナの雷でも受けたかのような衝撃が私の全身を貫いた。 主の寝間着姿を見ることは珍しくない。同性の側近もしかりだ。だが、普通の貴族には異性の側近に寝間着姿で接する機会などない。 私はフィリーネの護衛だという認識があるからだろうか、フランは当たり前のように控えていて、この事態に気づいている気配はない。 ……寝間着なのだぞ? 全身におかしな汗がにじんできた。まだ婚約もしていないフィリーネの寝間着姿など見てしまって良いのか。もしもフィリーネが私に求婚しないのであれば大いに問題があるのではないか。 ……いや、フィリーネは賢明だ。私がいることはわかっているのだから、問題があると判断したなら普通の服で出てくるくらいのことはするだろう。 逆に言えば、問題を感じないのであれば寝間着で来る。私に寝間着を見せても良いと思うならば……私を将来の伴侶と見做しているのであれば……寝間着で来るに違いない。心臓が早鐘を打ち始めた。 ……なんてことだ。 私はずっと自分の気持ちを押し殺してきた。フィリーネに惹かれていると自覚する前からずっとだ。いくらでも未来があるフィリーネが選択肢のない私に興味を持たれるだなんてそれだけでも迷惑だと思い、唇をきつく結んできた。 エルヴィーラ様から提案をいただいてからもずっと、フィリーネの未来をつぶすような求婚はすまいと。そう思って待ってきた。 少しでもフィリーネが選んでくれる可能性があるならと己を磨きながら。時々、選んでもらえたならどれほど幸せだろうと夢想しながら。 だが、自分はこの期に及んで本当の覚悟なんてできていなかったのだと思い知らされる。のこのこと寝間着で出てきてしまったのだから。私はフィリーネに寝間着を見せても構わないが、フィリーネはこんなもの見たくないかも知れないではないか。 だらしないだけなのだと流してもらえれば良いが、将来の伴侶気取りなのかと疑われたら。それでフィリーネの選択肢から完全に外されてしまったら。一度頭をよぎってしまうと嫌な考えばかりが浮かんでくる。 ……そうだ、まだ間に合うかも知れない。フランに着替えを頼も…… 「フィリーネ様がお風呂を終えられました」 ……遅かった! 私はドアを開けたモニカを見つめた。その後ろにいるはずのフィリーネが怖くて見られない。お茶を淹れに行くというフランに生返事を返して、視線を彷徨わせる。どこからどう見ても不審な行動だろう。「あの……ダームエル? どうかしましたか……?」 ……もうだめだ。覚悟しよう。フィリーネが普通の服でも泣くまい。そして、自分が寝間着であることを謝るのだ。「……いや、その……なんでも……」 目を上げた瞬間、息を飲んだ。まばたきを忘れた。フェアドレンナの雷だけではなく、水の女神と光の女神を総動員したような激流のようでも閃光のようでもある衝撃に、私は動けなくなった。 フィリーネは、寝間着だった。 ゆるく片側にまとめられている髪。まだ上気している頬。赤みを増している唇。ゆったりとした寝間着に包まれた、この上なく愛らしい姿。 ……あぁ。 胸は押しつぶされそうに苦しくて、息はうまくできなくて、それでも後から後から湧き上がってくる歓喜が全身を震わせて。 気がつくと私は恥も何もなく涙を流していた。「ダームエル、ダームエル!?」 フィリーネがひどく困惑している。申し訳なさも感じるが、涙を止めることはできない。いかなる女神よりも美しく愛おしい姿が間近にあることで、さらに涙があふれてくる。「……神に祈りを!」 私はとめどなく涙を流したまま神々に最大の感謝を捧げた。 おしまい[本好きの下剋上ファン作品 No.24]#本好きファン小説 #ダムフィリ #ダームエル #フィリーネ 本好きファン作品/小説* 2025/04/16(Wed) 01:27
ダムフィリ2000文字程度。ダームエル視点。ギャグ。わたくし、コミカライズ四部10のおかげで無事に奇行に走ることができましたので、ダームエルにも奇行に走っていただきました。(意訳:コミカライズ四部10巻かきおろしのフィリーネさんの姿に大興奮して書いたものです)原作との整合性はやや抑えめ。
「ダームエル様、湯加減はよろしいでしょうか」
「あぁ、ちょうど良いよ」
フィリーネが初めて青色巫女見習いとして向かう祈念式の旅に、私は護衛という名目で同行することになった。しかし護衛だけすれば良いわけではない。神事の流れに慣れた者としてフィリーネに助言をしたり、会食には共に参加したりと、状況に応じた対応が求められている。
幸いにも旅の初日はつつがなく進んだ。私達の後ろにローゼマイン様を見ているであろうギーべは本館で歓待したがっていたが、私達はそれを振り切って青色神官や巫女が使う離れに落ち着くことができた。
今はフィリーネも私も風呂に入っている。あとは軽く明日の予定を確認して寝るだけだ。緊張がほぐれてきて、私は少し体の力を抜いた。
力を抜いている場合ではなかったと気づいたのは、風呂を終えてすぐのことだった。
私の世話をするフランが用意していたのは寝間着。これから就寝するのだから当然だが、寝間着だ。フィリーネはまだ風呂から出ていないが、やはり寝間着で出てくるだろう。
……寝間着!?
瞬間、フェアドレンナの雷でも受けたかのような衝撃が私の全身を貫いた。
主の寝間着姿を見ることは珍しくない。同性の側近もしかりだ。だが、普通の貴族には異性の側近に寝間着姿で接する機会などない。
私はフィリーネの護衛だという認識があるからだろうか、フランは当たり前のように控えていて、この事態に気づいている気配はない。
……寝間着なのだぞ?
全身におかしな汗がにじんできた。まだ婚約もしていないフィリーネの寝間着姿など見てしまって良いのか。もしもフィリーネが私に求婚しないのであれば大いに問題があるのではないか。
……いや、フィリーネは賢明だ。私がいることはわかっているのだから、問題があると判断したなら普通の服で出てくるくらいのことはするだろう。
逆に言えば、問題を感じないのであれば寝間着で来る。私に寝間着を見せても良いと思うならば……私を将来の伴侶と見做しているのであれば……寝間着で来るに違いない。心臓が早鐘を打ち始めた。
……なんてことだ。
私はずっと自分の気持ちを押し殺してきた。フィリーネに惹かれていると自覚する前からずっとだ。いくらでも未来があるフィリーネが選択肢のない私に興味を持たれるだなんてそれだけでも迷惑だと思い、唇をきつく結んできた。
エルヴィーラ様から提案をいただいてからもずっと、フィリーネの未来をつぶすような求婚はすまいと。そう思って待ってきた。
少しでもフィリーネが選んでくれる可能性があるならと己を磨きながら。時々、選んでもらえたならどれほど幸せだろうと夢想しながら。
だが、自分はこの期に及んで本当の覚悟なんてできていなかったのだと思い知らされる。のこのこと寝間着で出てきてしまったのだから。私はフィリーネに寝間着を見せても構わないが、フィリーネはこんなもの見たくないかも知れないではないか。
だらしないだけなのだと流してもらえれば良いが、将来の伴侶気取りなのかと疑われたら。それでフィリーネの選択肢から完全に外されてしまったら。一度頭をよぎってしまうと嫌な考えばかりが浮かんでくる。
……そうだ、まだ間に合うかも知れない。フランに着替えを頼も……
「フィリーネ様がお風呂を終えられました」
……遅かった!
私はドアを開けたモニカを見つめた。その後ろにいるはずのフィリーネが怖くて見られない。お茶を淹れに行くというフランに生返事を返して、視線を彷徨わせる。どこからどう見ても不審な行動だろう。
「あの……ダームエル? どうかしましたか……?」
……もうだめだ。覚悟しよう。フィリーネが普通の服でも泣くまい。そして、自分が寝間着であることを謝るのだ。
「……いや、その……なんでも……」
目を上げた瞬間、息を飲んだ。まばたきを忘れた。フェアドレンナの雷だけではなく、水の女神と光の女神を総動員したような激流のようでも閃光のようでもある衝撃に、私は動けなくなった。
フィリーネは、寝間着だった。
ゆるく片側にまとめられている髪。まだ上気している頬。赤みを増している唇。ゆったりとした寝間着に包まれた、この上なく愛らしい姿。
……あぁ。
胸は押しつぶされそうに苦しくて、息はうまくできなくて、それでも後から後から湧き上がってくる歓喜が全身を震わせて。
気がつくと私は恥も何もなく涙を流していた。
「ダームエル、ダームエル!?」
フィリーネがひどく困惑している。申し訳なさも感じるが、涙を止めることはできない。いかなる女神よりも美しく愛おしい姿が間近にあることで、さらに涙があふれてくる。
「……神に祈りを!」
私はとめどなく涙を流したまま神々に最大の感謝を捧げた。
おしまい
[本好きの下剋上ファン作品 No.24]
#本好きファン小説 #ダムフィリ #ダームエル #フィリーネ