ナカミヱズログ

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アンゲリカの助言

神殿に通い始めて落ち込んでいたころのフィリーネとアンゲリカと、アンゲリカ語を通訳するダームエルのお話。短め。





「フィリーネはすごいです。ニコラ達とも仲良くしていますから、大丈夫ですよ」

 アンゲリカはそう言って美しく微笑みました。わたくしが落ち込んでいるのを心配してくれているのでしょう。

 ……お仕事ができていないのに、励ましていただけるなんて。

 アンゲリカの優しさに、嬉しい気持ちが広がっていきます。
 けれど、アンゲリカがわたくしの何を大丈夫と言ってくださったのかは、よくわかりませんでした。
 ブリュンヒルデやハルトムートの言葉も難しいですが、アンゲリカはあまりたくさんお話をしないので、わたくしにはまだ意味をつかみきれないこともあるのです。

 ……わたくし、もっと頑張らなくてはなりませんね。

「あ〜、フィリーネ。フィリーネは自分が文官だから、書類仕事は当然だと思っているかも知れないが。
 アンゲリカはおそらく、書類仕事をしているだけでも見上げたものだと言っている」

 見かねたように補足してくれたダームエルに、アンゲリカがこくこくと頷きます。

「それに、ローゼマイン様が灰色神官も灰色巫女も軽んじることはないのはわかっているだろう? 
 我々側近が、神殿の側仕え達も尊重し、協力して仕事をこなすことも、主の要望に含まれる。
 だから、皆に丁寧に接するフィリーネは、すでに一つ仕事ができているようなものだ。
 慣れない書類仕事に手こずるくらい、気に病むことはない」

 ダームエルが言い終えると、アンゲリカは「その通りです」と言うようにゆっくりと頷き、またニコリと笑ってくれました。見ると、給仕や片付けをしているニコラもザームも、柔らかい目をしてくれています。

「……ありがとう存じます」

 わたくしも、自分の表情が自然にやわらいでいくのを感じました。

 貴族も平民も、騎士も文官も側仕えも、皆が皆を大切にし、力を合わせる。ここは、ローゼマイン様の神殿長室は、そういう場所なのですね。

 わたくしはおいしさを感じられるようになったお茶を飲みながら、あらためて感謝と尊敬の念を抱きました。







[本好きの下剋上ファン作品 No.12]
#アンゲリカ #フィリーネ #ダームエル #本好きファン小説