七夕にも落ち込んでいる現パロダームエルとほんの少しだけ親切なハルトムートの話 ほぼタイトル通りの現パロ。ダムフィリは両片思い中。 『今年こそ結婚できますように』「……か。ハァ……」 飾り付けの終わった笹を一瞥し、ダームエルの短冊を音読したハルトムートが、あきれたように大きなため息をついた。「……なんとでも言ってくれ。私はハルトムートのように出会いに恵まれてはいないのだ」 ダームエルは報告書を書きながら、しおしおと肩を落とした。ハルトムートは片眉を上げ、さらに大げさなため息を追加する。「出会いに恵まれていない? ……ハァ」「いないだろう……」 周囲にいるのは既婚者か婚約済か、立場もしくは年齢が違いすぎる者。もしも手を出したらそこで人生が終わりかねない相手ばかりだ。親しげに接してくれる者はいても、「女心が全然わかっていない」などとからかわれるばかり。恋愛対象としては見向きもされていない。ダームエルは本気でそう思っている。「……ダームエルの目が悪いだけだ」 ハルトムートはダームエルの短冊から手を離すと、すぐ隣の一枚を手に取った。『皆が怪我や病気などしませんように』 事務員のフィリーネの短冊だ。ハルトムートはこの『皆』に、真っ先に含まれているのが誰なのかを知っている。「今からでも遅くない。『察しが良くなりますように』とでも書き直したらどうだ」「うぅっ……」 ダームエルが眉をハの字にして呻くと、事務所に置くにしてはやや立派な笹が、ハルトムートに同意するかのように小さく揺れた。元同僚が事務所にと贈ってくれた笹だ。出身地に帰って結婚した彼女が、呆れたような困ったような顔で笑っているような気がした。「私はそんなに女心がわかっていないだろうか?」「……かなり」 ますます情けない顔になったダームエルに、ハルトムートは笹から離れながら首を縦に振った。「今日の祭り、ダームエルも来るのだろう。せっかくだ、誰かに恋人のふりでもしてもらって、教えを乞えばいいんじゃないか」 私の妻は貸さないがな。軽い口調のままダームエルに追い打ちをかけると、ハルトムートは優雅に事務所を出て行った。一人になったダームエルは、ぐてりと机に突っ伏す。「そんなこと、頼めるものか……」 反射的に頭に浮かんだ事務の少女の姿に、心の中でぶんぶんと首をふる。もし本当に頼んだなら面白がって付き合ってくれるかも知れないが、だからこそいけないとダームエルは思った。冗談にかこつけて交際の真似事をさせるなど、あってはならない。 少女は法律的には結婚が可能な年齢だが、まだ若い。しかも、タチの悪い実家があり実父達と距離を置くために結婚するという手段もなくはないという悩ましい事情を持っている。フリーであることだけが取り柄のようなダームエルが近寄ろうとするなんて、冗談にできないのだ。 本当に短冊の書き直しでもするかと。ダームエルは自嘲気味にため息をついた。 恋人のふりと言われてなぜ彼女を思い浮かべたのか。 『冗談』がいけないと思うのはなぜなのか。 本当に、遊びとしての不適切さが気になるだけなのか。それとも。 関係を冗談にする、嘘にするほうが嫌なのか。 ダームエルが自身に問いかけてみる余裕は、まだなかった。----------(2023/07/07追記)あとがきダームエルは『自分に対する恋愛感情』に鈍いというか、『相手が困りそうなら恋愛対象と見做さないよう(無意識レベルの抑制を含めて)努力している』人だと思うので、現パロにするとなおさら『ただの常識家では?』感がありますね……(※主観には個人差があります)現パロの場合、「フィリーネがいるから良いだろう」と考えているハルトムートのほうが非常識とすら言えてしまうかもですけど、うちのハルトムートはダームエルがフィリーネを一生尊重できる人間だと思ってるので容赦しません(笑)続き(おそらく似たような時空の、これより未来の話)はこちら:[本好きの下剋上ファン作品 No.22] 現パロにぶにぶローゼマインさんの短い語り https://privatter.net/p/9562289更新履歴:2023/07/07 加筆修正。後書き追加。[本好きの下剋上ファン作品 No.10]#ダムフィリ #本好きファン小説 #本好きの下剋上 #ハルトムート #ダームエル 本好きファン作品/小説* 2019/07/07(Sun) 23:58
ほぼタイトル通りの現パロ。ダムフィリは両片思い中。
『今年こそ結婚できますように』
「……か。ハァ……」
飾り付けの終わった笹を一瞥し、ダームエルの短冊を音読したハルトムートが、あきれたように大きなため息をついた。
「……なんとでも言ってくれ。私はハルトムートのように出会いに恵まれてはいないのだ」
ダームエルは報告書を書きながら、しおしおと肩を落とした。ハルトムートは片眉を上げ、さらに大げさなため息を追加する。
「出会いに恵まれていない? ……ハァ」
「いないだろう……」
周囲にいるのは既婚者か婚約済か、立場もしくは年齢が違いすぎる者。もしも手を出したらそこで人生が終わりかねない相手ばかりだ。親しげに接してくれる者はいても、「女心が全然わかっていない」などとからかわれるばかり。恋愛対象としては見向きもされていない。ダームエルは本気でそう思っている。
「……ダームエルの目が悪いだけだ」
ハルトムートはダームエルの短冊から手を離すと、すぐ隣の一枚を手に取った。
『皆が怪我や病気などしませんように』
事務員のフィリーネの短冊だ。ハルトムートはこの『皆』に、真っ先に含まれているのが誰なのかを知っている。
「今からでも遅くない。『察しが良くなりますように』とでも書き直したらどうだ」
「うぅっ……」
ダームエルが眉をハの字にして呻くと、事務所に置くにしてはやや立派な笹が、ハルトムートに同意するかのように小さく揺れた。元同僚が事務所にと贈ってくれた笹だ。出身地に帰って結婚した彼女が、呆れたような困ったような顔で笑っているような気がした。
「私はそんなに女心がわかっていないだろうか?」
「……かなり」
ますます情けない顔になったダームエルに、ハルトムートは笹から離れながら首を縦に振った。
「今日の祭り、ダームエルも来るのだろう。せっかくだ、誰かに恋人のふりでもしてもらって、教えを乞えばいいんじゃないか」
私の妻は貸さないがな。軽い口調のままダームエルに追い打ちをかけると、ハルトムートは優雅に事務所を出て行った。一人になったダームエルは、ぐてりと机に突っ伏す。
「そんなこと、頼めるものか……」
反射的に頭に浮かんだ事務の少女の姿に、心の中でぶんぶんと首をふる。もし本当に頼んだなら面白がって付き合ってくれるかも知れないが、だからこそいけないとダームエルは思った。冗談にかこつけて交際の真似事をさせるなど、あってはならない。
少女は法律的には結婚が可能な年齢だが、まだ若い。しかも、タチの悪い実家があり実父達と距離を置くために結婚するという手段もなくはないという悩ましい事情を持っている。フリーであることだけが取り柄のようなダームエルが近寄ろうとするなんて、冗談にできないのだ。
本当に短冊の書き直しでもするかと。ダームエルは自嘲気味にため息をついた。
恋人のふりと言われてなぜ彼女を思い浮かべたのか。
『冗談』がいけないと思うのはなぜなのか。
本当に、遊びとしての不適切さが気になるだけなのか。それとも。
関係を冗談にする、嘘にするほうが嫌なのか。
ダームエルが自身に問いかけてみる余裕は、まだなかった。
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(2023/07/07追記)あとがき
ダームエルは『自分に対する恋愛感情』に鈍いというか、『相手が困りそうなら恋愛対象と見做さないよう(無意識レベルの抑制を含めて)努力している』人だと思うので、現パロにするとなおさら『ただの常識家では?』感がありますね……(※主観には個人差があります)
現パロの場合、「フィリーネがいるから良いだろう」と考えているハルトムートのほうが非常識とすら言えてしまうかもですけど、うちのハルトムートはダームエルがフィリーネを一生尊重できる人間だと思ってるので容赦しません(笑)
続き(おそらく似たような時空の、これより未来の話)はこちら:
[本好きの下剋上ファン作品 No.22] 現パロにぶにぶローゼマインさんの短い語り https://privatter.net/p/9562289
更新履歴:2023/07/07 加筆修正。後書き追加。
[本好きの下剋上ファン作品 No.10]
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