ナカミヱズログ

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そこそこトシをとったダムフィリとウィンクの話

タイトル通りの短い話。





「では……あの子のこと、よろしくお願いしますね」
「あぁ、フィリーネ。まかせてくれ」

 孫の送迎を快く引き受けてくれたダームエルは、ぱちりと片目を瞑って見せてから神殿学校に向かって飛んで行きました。

 ……ほんとうに上手になりましたね。

 嬉しそうに、ほんの少し得意げにも見えるようなウィンクをしてくれるようになったダームエル。その背中を見送りながら、心に浮かんでくる数々の思い出に、わたくしは目を細めました。

 若い頃のダームエルはウィンクが苦手で、しかめっ面になっていたこと。上手くなりたいと、恥ずかしそうに語ってくれたこと。何年もかかって自然にできるようになったこと。できるようになってから、わたくしやまだ見ぬ子供とのやりとりのために身に付けたのだと教えてくれたこと……どれも大切な思い出です。

 ……周囲の婚約者や家族達のウィンクがうらやましかっただなんて、ダームエルらしいこと。

 ウィンクなど上手くできなくてもいい。できるようになったとしても見せる相手もいないのだから。
 そのように拗ねていた気持ちが自分もできるようになりたいという目標に変わったのは、わたくしとほんとうに結婚できるかも知れないと思えた時だったそうです。ダームエルはわたくしの夫候補になりたいと、小さなことにも努力を重ねてくださったのです。

 ……わたくしも、まだまだ負けませんよ。

 ダームエルの妻として、あの子の祖母として、文官として、恥じることのない姿を見せられますように。わたくしは孫の来訪に向けて、気合を入れ直しました。




   ─ 了 ─





おまけ:このおはなしの独自設定

舞台は未来のアレキサンドリア。ダムフィリに孫がいることからわかる通り、初代アウブ世代の家の代替わりが珍しくないくらい年月が過ぎています。

ダームエルの主な仕事は神殿学校の教師になっており、フィリーネは在宅で出版関係の仕事を続けつつ、家の当主となった娘の補佐をしています。

ダームエルとフィリーネの子供は男女ひとりずつ。どちらにも子供(ダムフィリから見れば孫)がいます。娘のほうが家を継いだのは、能力的には甲乙がつけにくく子供達と話し合った結果。(ゲオルギーネのような性差による無念を減らしていく風潮づくりの一端でもあります。)

婚姻のため家を出た息子とその家族とも仲は良く、今はそちらの孫が神殿学校に通っています。

この日は、神殿学校が終わったらダームエルが別居孫を連れて帰ってきて、一晩あずかる予定。

別居孫と同居孫も仲良しですから、賑やかな日となるでしょう。




#ダムフィリ