ナカミヱズログ

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優秀だった側仕え

短め。暗め。アルノーを思い出すフェルディナンド。




 ……そろそろ切らねばならぬか。

 立場上、髪をあまり乱してはおけない。それに、これ以上伸びると髪留めを勧められかねない。
 側仕えを呼ぼうと、反射的に手を伸ばしかけた。

 ……おらぬな。

 手を止める。
 今、このベルを鳴らしても、あの者は来ない。
 もう、来ない。
 私はそれを誰よりも知っている。

 ……優秀な男だった。

 仕事量が急激に増えたため集めた灰色神官の中で、最も洗練されていた男。あの者は、最後の日が来るまで、能力で得た自分の立場を疑っていなかった。

 ……優秀だったのだ。私に向ける刃物を預けられるほどに。フランへの悪意を、隠しおおせていたほどに。

 何食わぬ顔で私の意に反していたあの者に、私もまた何食わぬ顔で作業を命じた。

 ……やはり手際は悪くなかった。最後の最後まで。

 髪を整える手際も悪くなかった筆頭側仕えの最後の仕事は、そうとは知らされぬまま、己の処刑の準備をすることだった。





   了






あとがき(蛇足)

 アルノーは確実に近くにいた者ですから、フェ様にもそれなりに失った感と言いますか……反射的に呼ぼうとしてしまうくらいのことはあるの〜ではないか、と。
 そして、いなくならせたのは自分なので、『いるはずない感』はどうしてもあって。知性理性では淡々と扱いつつも、覚えていることからは逃れられない、みたいな……フェ様ひとりの中ではじまり、ひとりの中で終わる、フェ様にとっては珍しくもなさそうな話が書きたかったのです。

 「髪を切らせる(刃物を持たせる)なら、ラザファムかユストクスでは?」などのセルフツッコミにより今まで公開せずにいましたが、吹っ切れたので出しました。執筆時期は2019年1月。『フェ様の側仕え』のメンバーがまだ不明瞭な頃の作品でした。






おまけ

『フェ様の側仕え』好きさんはぜひお読みになって! ……と思う原作メモ

もしも見落としていらっしゃる方がいらしたらほんとうに勿体ないので書いておきます




★書籍四部9『思い出と別れ』(2019年12月)

 側仕え達の会話が多めに入っています。



★書籍短編集3/web『フラン視点 神官長室の雑談』

https://ncode.syosetu.com/n7835cj/51/

上記『思い出と分かれ』の、はみ出し部分(2022/12/20に下記の活動報告より独立)


初出メモ(活動報告):
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/vi...






更新履歴:
2025.7.8 原作情報にSS置き場を追加
2025.10.30 原作情報に短編集3を追記




[本好きの下剋上ファン作品 No.19]
#フェルディナンド #アルノー #本好きファン小説