ナカミヱズログ

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(未完注意) お蔵出し フラン視点、神殿学校の放課後

未来のアレキ神殿妄想。孫のいる歳のダームエルと、フランが、神殿学校の教師になっているお話。未完ですが、「このくらい先の2人の姿が見たいんですよ、どなたか!」と言ってるだけでもアレなので、自分の妄想を公開してみました。




「ダームエル先生、フラン先生、皆様。またの水の日、光の女神の訪れと共に」
「光の女神の訪れと共に」

 翌日が休みの時の、普段とは少しだけ違う別れの挨拶の唱和を終え、神殿学校の子供達が帰って行きます。
 教室では生徒はみな『生徒』、平等に扱われますが、社会を知る必要もあるため退出は基本的に身分順です。貴族や一部の豪商の子供には迎えが来ている場合もあり、そういった子供達を後にすると待合い室の使用が長引いてしまいますから、立場が上の者を先にするほうが効率的だという理由もあります。

 通いの子供達が全員講堂を出て行き、神殿の子供達が神殿内に向かうのを見送って、施錠。それが普段の流れです。
 しかし、今日は一人だけ貴族の子供が残っていました。洗礼式を終えたにしては少々小柄な女の子です。
 私達のかたわらに立ち、もじもじとダームエル様を見上げています。その様子だけで彼女が何を求めているかは明白ですが、ダームエル様は目を細めたまま静かに彼女が口を開くのを待っていました。

「……ダームエルおじい様。今日は本当におじい様のお宅におうかがいしてもよろしいのでしょうか?」

「あぁ。約束していた通り、私の騎獣で帰ろう。だからきちんと待合室で待っていなさい」

「はい!」

 ダームエル様がうなずくと、彼女はぱっと新緑が芽吹くような笑みを浮かべて、駆け出したいのを一生懸命抑えているような足取りで講堂を出て行きました。
 あわただしい、と言ってもいいようなその後ろ姿に、私達はどちらからともなくクスリと笑いました。

「彼女はいつも活動的ですね」
「元気すぎて側仕えを困らせているそうだからな。
 あの子は移動するにも、馬車より騎獣に同乗するほうを、騎獣でも乗り込み型より従来型のほうを好むのだ。
 健康なのは喜ばしい限りだが、私も少々戸惑っている。
 一体誰に似たのか……」

 落し物や忘れ物がないか講堂内を見て回りながら、ダームエル様は肩をすくめました。

 私は知る限りの彼女の縁者を思い浮かべます。祖父のダームエル様、祖母のフィリーネ様。ご両親とそのご兄弟。従兄弟。彼女に似た性質の方はいらっしゃいません。ダームエル様の兄君のヘンリック様も、緊張して会議にいらっしゃる姿か、温かみのある微笑しか記憶にありません。
 しかし。

 ……心当たりはあります。

 私はその名を口にして良いものか少し迷いながら、正面扉の前に立ちました。

「……コンラート様ではございませんか」

 コンラート様はエーレンフェストの神殿で孤児院長を勤めていらっしゃる青色神官で、ダームエル様の義弟です。彼女から見れば祖母の弟にあたりますが、身寄りのない平民として洗礼式を受けたため、公の関係は失われている家族なのです。
 ダームエル様が一瞬、足を止めたのが見えました。

「……フランもそう思うか」
「はい。髪の色も少し似ていますが……彼女の瞳を見ていると、活発になられてからのコンラート様を思い出します」

 がちゃり、と正面扉に施錠して、私は次の扉に向かいました。

「そうか……」

 ダームエル様は足を進めながら深く息をつきました。

 コンラート様は本人さえその気になれば貴族として洗礼式を受けることもできる方でした。当時のフィリーネ様は未成年で後ろ盾になることが困難でしたが、支えることのできるダームエル様がいらっしゃいました。支援を受ければ、コンラート様は貴族になれたのです。

 しかし、親に虐げられ見捨てられたコンラート様は貴族の身分を望まず、フィリーネ様も婚約によるダームエル様の支援をきっぱりと断ったそうです。

 そこで、縁談そのものを拒否されたと誤解したダームエル様がひどく落ち込んだりもしましたが、それは置いておいて。

 ダームエル様もフィリーネ様も、コンラート様に対してできることをしなかったのではなく、コンラート様の意思と選択を尊重したのです。

 それでもお二人はコンラート様を惜しむ気持ちも止められませんでした。もし貴族になっていたなら、誰にはばかることなくフィリーネ様を姉と呼び、そのお子様を抱きしめることもできたのですから。
 会わせてやりたいものだと。お子様を連れて神殿にいらしたダームエル様がぽつりとこぼされた時、私にはそれが「誰に」なのかすぐにわかりました。当時のアレキサンドリアの神殿教室はまだ小さく、元となったエーレンフェストの孤児院の一室を思い出すような部屋だったからです。

 ……しかし、それももう何十年も前の話。

 成人したコンラート様は隣の領地にいても活躍を耳にするほどの『商人系神官』となり、神官長のディルク様と共にエーレンフェストの神殿を支えるようになりました。印刷業でつながりのあるダームエル様のご実家や商人達との関係も良好。神殿の各部屋の厨房を利用した料理人の育成から、食に携わる商会への影響力も強め、新たな味の分野にも一役かうようになったそうです。
 ついにはアレキサンドリアのご家族との面会も果たされて、距離の遠さはあれど、貴族になれなかったことを惜しむような空気はすっかり影を潜めました。

 今やコンラート様のお名前はエーレンフェストの話をしていると時おり自然に出てくるもので、口にするのをためらうことなどなかったのです。
 こうして「似ている」という話になるまでは。

 がちゃり。二枚目の扉を施錠して、私も歩き続けます。

「……あの子は」

 ダームエル様が、お子様を連れて来られたあの時のように、ぽつりと口を開きました。

「育つにつれ、コンラートに似てきた。
 真っ先に気づいたのはフィリーネだ。あの子の両親はフィリーネに似たのだと思っているが……見ての通り、幼いころのコンラートのほうがより近い。
 そして、似ているのは外見だけではない。
 あの子はコンラートと同じお話を喜び、同じ遊びに夢中になるのだ。
 今はお話も玩具も昔とは比べものにならないほど増えたのに、不思議なほどコンラートと似た物を選ぶ。
 それでいて……騎獣に喜び、シュタープをうらやむ」

 私は内側から施錠する最後の扉に手をかけました。ダームエル様は話を続けます。

「あの子が貴族特有のものを求めるたび、我々はどうしても思ってしまうのだ。





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