ナカミヱズログ

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お蔵出し パティシエダム幻の冒頭部分

『甘党パティシエ』幻の冒頭部分です〜
 設定が変わったためにお蔵入りになっていたもので、まるきりの前日譚というわけではありませんが、だいたいこんな感じ。一緒に助け出されたコンラートは眠っています。




あたたかい。
 やさしい。
 こんなにおいしいものは、はじめて。

 あの日ダームエルが焼いてくれたパンケーキを、フィリーネは一生忘れないと思う。

 親に虐待されていたフィリーネ達は、数年前に家から離れた。その時、助けてくれた人の一人がダームエルだった。
 保護されたことを実感し、安堵のあまり泣き出してしまったフィリーネに、ダームエルは困った顔をしながらパンケーキを焼いてくれた。

「ありあわせですまないが……た、食べれそうかい?」

 フィリーネはうなずいて、パンケーキをそっと口に運んだ。
 しゃくりあげながら食事をする子供なんてさぞ見苦しいだろう。申し訳ないと思ったけれど、涙は止まらない。仕方なく、ぼろぼろとこぼしながら、手と口を動かし続けた。
 ただただフィリーネの涙をぬぐうためだけに作られたそれは、それまで食べたどんな物より美味しかった。

「おいしい、です。ありがとう、ございます」

 やっとのことでそう言って、恐る恐る顔を上げると、ダームエルはフィリーネが思いもしなかった顔をしていた。
 
「……君は、強いな」

 真剣な目が優しく細められる。

「こんなに辛い時に、お礼まで言えるなんて、偉いぞ」

 その言葉も、フィリーネがそれまで聞いたどんな言葉よりも嬉しくて。

 フィリーネは、新しい生活で様々なことを学ぶ中で、自分の気持ちに『恋』という名前がついていることを知った。



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