お蔵出し パティシエダム幻の冒頭部分 『甘党パティシエ』幻の冒頭部分です〜 設定が変わったためにお蔵入りになっていたもので、まるきりの前日譚というわけではありませんが、だいたいこんな感じ。一緒に助け出されたコンラートは眠っています。あたたかい。 やさしい。 こんなにおいしいものは、はじめて。 あの日ダームエルが焼いてくれたパンケーキを、フィリーネは一生忘れないと思う。 親に虐待されていたフィリーネ達は、数年前に家から離れた。その時、助けてくれた人の一人がダームエルだった。 保護されたことを実感し、安堵のあまり泣き出してしまったフィリーネに、ダームエルは困った顔をしながらパンケーキを焼いてくれた。「ありあわせですまないが……た、食べれそうかい?」 フィリーネはうなずいて、パンケーキをそっと口に運んだ。 しゃくりあげながら食事をする子供なんてさぞ見苦しいだろう。申し訳ないと思ったけれど、涙は止まらない。仕方なく、ぼろぼろとこぼしながら、手と口を動かし続けた。 ただただフィリーネの涙をぬぐうためだけに作られたそれは、それまで食べたどんな物より美味しかった。「おいしい、です。ありがとう、ございます」 やっとのことでそう言って、恐る恐る顔を上げると、ダームエルはフィリーネが思いもしなかった顔をしていた。 「……君は、強いな」 真剣な目が優しく細められる。「こんなに辛い時に、お礼まで言えるなんて、偉いぞ」 その言葉も、フィリーネがそれまで聞いたどんな言葉よりも嬉しくて。 フィリーネは、新しい生活で様々なことを学ぶ中で、自分の気持ちに『恋』という名前がついていることを知った。#ダムフィリ #パティシエダム #本好きファン小説 本好きファン作品/小説* 2020/06/21(Sun) 20:03
『甘党パティシエ』幻の冒頭部分です〜
設定が変わったためにお蔵入りになっていたもので、まるきりの前日譚というわけではありませんが、だいたいこんな感じ。一緒に助け出されたコンラートは眠っています。
あたたかい。
やさしい。
こんなにおいしいものは、はじめて。
あの日ダームエルが焼いてくれたパンケーキを、フィリーネは一生忘れないと思う。
親に虐待されていたフィリーネ達は、数年前に家から離れた。その時、助けてくれた人の一人がダームエルだった。
保護されたことを実感し、安堵のあまり泣き出してしまったフィリーネに、ダームエルは困った顔をしながらパンケーキを焼いてくれた。
「ありあわせですまないが……た、食べれそうかい?」
フィリーネはうなずいて、パンケーキをそっと口に運んだ。
しゃくりあげながら食事をする子供なんてさぞ見苦しいだろう。申し訳ないと思ったけれど、涙は止まらない。仕方なく、ぼろぼろとこぼしながら、手と口を動かし続けた。
ただただフィリーネの涙をぬぐうためだけに作られたそれは、それまで食べたどんな物より美味しかった。
「おいしい、です。ありがとう、ございます」
やっとのことでそう言って、恐る恐る顔を上げると、ダームエルはフィリーネが思いもしなかった顔をしていた。
「……君は、強いな」
真剣な目が優しく細められる。
「こんなに辛い時に、お礼まで言えるなんて、偉いぞ」
その言葉も、フィリーネがそれまで聞いたどんな言葉よりも嬉しくて。
フィリーネは、新しい生活で様々なことを学ぶ中で、自分の気持ちに『恋』という名前がついていることを知った。
#ダムフィリ #パティシエダム #本好きファン小説